脂肪酸のβ酸化の反応の流れ【パルミチン酸を例にATP生成量も紹介】

β酸化に興味のある人「脂肪酸のβ酸化の反応の流れを知りたい!併せて、最終的に生成されるATPの量も知りたい!!」

本記事ではこの疑問に答えます。

現役医療従事者のトッティ(@totthi1991)です。

本記事の内容は以下のとおりです。

  • 脂肪酸のβ酸化の反応の流れ【反応は4つあります】
  • β酸化によってつくられるATPの量【パルミチン酸を例に紹介】

本記事は下記の書籍を参考に執筆しております。

1.脂肪酸のβ酸化の反応の流れ

β酸化には以下の4つの反応があります。

  • 反応①:脱水素(酸化還元反応)
  • 反応②:水分子の付加(除去付加反応)
  • 反応③:脱水素(酸化還元反応)
  • 反応④:炭素間の切断(転移反応)

それでは順を追って一つずつ説明していきます。

反応①:脱水素(酸化還元反応)

1つ目の反応は脱水素反応です。

α炭素とβ炭素からそれぞれ水素が除去されて、合計2個の水素が除去されます。

水素を除去する化合物は、電子伝達体のFADです。

  • FAD + 2H → FADH2

※ FADは2個の水素を運ぶことができます。

電子伝達体について詳しく知りたい人は下記の記事をごらんください。

電子伝達体のNADとは?FADとは?【役割や種類について解説します】

2018年8月16日

反応②:水分子の付加(除去付加反応)

2つ目の反応は水分子を付加する反応です。

α炭素に水素(H)、β炭素にヒドロキシ基(OH)が付加されます。

反応③:脱水素(酸化還元反応)

3つ目の反応は脱水素反応です。

β炭素の水素が2個除去されます。

水素を除去する化合物は、電子伝達体のNAD+です。

  • NAD+ + 2H → NADH + H+

※ NAD+は2個の水素を運ぶことができます。

反応④:炭素間の切断(転移反応)

4つ目の反応は、α炭素とβ炭素の結合を切断です。

この反応によってアセチルCoAが分離し、β炭素のあるアセチル基に新たなSCoA(補酵素A)が転移します。
そして炭素数が2個減ったアシルCoAが誕生します。

β酸化(反応①~④)

  • アシルCoA
    → アセチルCoA + 炭素数が2個減ったアシルCoA

上記、反応①~④までがワンセットでβ酸化です。

炭素数が2個減ったアシルCoAは、再びβ酸化をうけて、1個のアセチルCoAを生成する、という反応を繰り返します。

最終的には脂肪酸は炭素数に応じた回数分のβ酸化をうけ、アセチルCoAが次々とつくられます。

※ 炭素数が4個にまで減ったアセトアセチルCoAだけは、それまでとは違う酵素によって、2個のアセチルCoAに分断されます。

2.脂肪酸のβ酸化によるATPの生成量【パルミチン酸を例に説明】

脂肪酸の一種である炭素数が16個のパルミチン酸を例に、β酸化によるATPの生成量を紹介します。

※ パルミチン酸のままだとβ酸化をうけることができないため、ATPのエネルギーを使いつつ脂肪酸に補酵素AがつけられてアシルCoAとなります(上の図を参照ください)。

補酵素Aとは?その構造や働きについてわかりやすく解説します

2019年1月23日

2.1.パルミチン酸のβ酸化

炭素数16個のパルミチン酸が1回のβ酸化の過程で以下の生成物がつくられます。

パルミチン酸が1回だけβ酸化されたときに生じる生成物

  • FADH2が1個
  • NADH+H+が1個
  • アシルCoAが1個
  • アセチルCoAが1個

パルミチン酸の場合、7回β酸化が繰り返されるので、トータルで以下の生成物がつくられます。

パルミチン酸が7回β酸化されたときに生じるトータルの生成物

  • FADH2が7個
  • NADH+H+が7個
  • アセチルCoAが8個

そして、FADH2とNADH+H+は、電子伝達系に運ばれてATP生成に利用されます。

アセチルCoAは、クエン酸回路に運ばれてATP生成に利用されます。

2.2.電子伝達系でのFADH2とNADH+H+の代謝によるATP生成

脂肪酸のβ酸化によって生成したFADH2とNADH+H+は、電子伝達系に運ばれてATP生成に利用されます。

簡単にわかりやすく電子伝達系を説明してみました

2018年8月19日

電子伝達系でつくられるATPの量は以下のとおりです。

  • 1個のFADH2からつくられるATPの量は1.5個です。
  • 1個のNADH+H+からつくられるATPの量は2.5個です。

パルミチン酸のβ酸化によって、FADH2とNADH+H+がそれぞれ7個ずつつくられるので、トータルでつくられるATPの量は28個となります。

  • 1.5×7 + 2.5×7 = 10.5 + 17.5 = 28

2.3.クエン酸回路でのアセチルCoAの代謝によるATP生成

脂肪酸のβ酸化によって生成したアセチルCoAは、クエン酸回路→電子伝達系の順番に代謝されてATP生成に利用されます。

クエン酸回路とはなに?できるだけわかりやすい説明をしています

2018年7月25日

アセチルCoAからつくられるATPの量は以下のとおりです。

  • 1個のアセチルCoAからつくられるATPの量は9.75個です。

※ 書籍によって、1個のアセチルCoAからつくられるATPの量が10個となっている場合もあります。

パルミチン酸の場合、β酸化によって8個のアセチルCoAがつくられるため、トータルでつくられるATPの量は78個となります。

  • 9.75×8 = 78

2.4.まとめ:パルミチン酸のβ酸化によってつくられるATPの量

まとめると、パルミチン酸のβ酸化によって106個(28+78)のATPがつくられます。

ただし、パルミチン酸の活性化のためにはATPが必要で、実質2個のATPが消費されます。

したがって、正味のATPの生成量は104個となります。

 

というわけで今回は以上です。