
こういった疑問に答えます。
本記事ではATP(アデノシン三リン酸)そのものについて、構造や役割についてわかりやすくまとめました。
目次
1.ATP(アデノシン三リン酸)とは?

ATP(アデノシン三リン酸)とは、すべての植物・動物・微生物の細胞のなかに存在しているエネルギーが蓄えられている物質のことです。
そんなATPの何がすごいのかというと、エネルギーを必要とするありとあらゆる状況で、エネルギーとして使われているところです。
- 身体を動かす
- 心臓を動かす
- 筋肉を動かす
- 胃や腸を動かす
- 呼吸をする
- 代謝をおこなう
上記のとおり、私たちが生きていくうえで必要なエネルギーは、ATP(アデノシン三リン酸)から得ています。
それくらい生命のエネルギー源として非常に重要な物質です。
1.1.私たちが食事をする理由は、このATPをつくるためです
ATP(アデノシン三リン酸)という物質は、私たちが生きていくために必要な、エネルギーを蓄えている物質のことです。
こんな言い方をすると、

こういう風に思うかもしれませんが、これは大きな間違いです。
たしかに、食べ物のなかにもエネルギーが蓄えられていて、そこから私たちはエネルギーを得ています。しかし、残念ながら食べ物をそのままの形からエネルギーとして使うことができません。
私たち生物は、いったん『食べ物→ATP』という変換をしてからでないと、エネルギーを利用することができません。
言い換えれば、私たちはATPを作るために食事をしているわけです。
じゃあ、ATP以外にもATPの代わりになるような物質があるのかというと、たしかにありますが、ほとんどの場合、ATPが使われています。
ちなみに、ATP以外の物質としては、GTP、GDP、UTP、CTPなどがあります。
1.2.ATPをなにかに例えるとしたら「PASMO」や「Suica」のようなものです
ATPをなにか他のものに例えるとしたら、電車に乗るために使うプリペイドカードの『PASMO』や『Suica』がイメージしやすいと思います。
このカードに現金をチャージしておけばいくらでも電車に乗ることができます。
しかし、現金がいくらあってもカードがなければ電車に乗ることはできません。
必ず現金を、プリペイドカードの『PASMO』や『Suica』にチャージしてからでないと改札をとおることはできません。
ATPもこれとほぼ同じようなものです。
食べ物をいったんATPという形にしておかないと、わたしたちはエネルギーとして利用することができません。
- 現金 → 「PASMO」や「Suica」にチャージ → 電車に乗れる
- 食べ物 → 「ATP」に変換 → 生命活動のエネルギーに使える
ようするに、私たちをはじめとする植物・動物・微生物は、食べ物をATPという形に一旦変換しないと使えないということです。
それくらい、ATPに蓄えられているエネルギーというのは、細胞にとって使い勝手のいいエネルギーの形をしていると認識してもらえればいいと思います。
コンビニに行って、100円のジュースを買うのに1万円札を出すとなんだか気持ち悪いですよね。
それと同じことような感じでして、ATPは生命にとって使いやすい形のエネルギーをしています。
こういった理由から、ATPは別名『エネルギーの通貨』とも呼ばれています。
2.ATPの構造

ATPは以下の3つで構成されています。
- 構成要素①:リボース
- 構成要素②:アデニン
- 構成要素③:リン酸
では、それぞれについて個別にみていきます。
2-1.構成要素①:リボース

リボースは炭水化物です。
もう少し具体的にいうと五単糖(炭素を5個もっている単糖のこと)です。
ちなみに、炭素Cを6つもっている六単糖の有名な炭水化物として、グルコース(C6(H2O)6)があります。
2.2.構成要素②:アデニン

アデニンは、プリン塩基の1つです。
プリン塩基とは、プリン骨格をもった塩基のことです。
他のプリン塩基にはグアニンがあります。
この2つ(アデニンとグアニン)は核酸(DNA、RNA)を構成する要素にもなっています。
また、上図の赤枠で囲った部分をプリン骨格といい、プリン骨格をもつ化合物を総称してプリン体といいます。
ちなみに、プリン体は代謝されると痛風の原因となる尿酸になります。
2.3.構成要素③:リン酸

リン酸は、いろんなところで使われている大切な化合物です。
例えば、細胞膜の材料になったり、遺伝情報が入ってるDNAに使われてたりしています。
2.4.アデノシン(リボース+アデニン)の構造

五単糖のリボースと、プリン体の一種のアデニンがくっついた物質のことを、アデノシンといいます。
2-5.ATP(アデノシン+リン酸×3)の構造

さらにアデノシンに、3つのリン酸をくっつければATP(アデノシン三リン酸)の完成です。
ATPの正式名称は「アデノシン三リン酸」です。
名前からわかるとおり、アデノシンに、3つのリン酸がくっついた化合物です。
3.ATPの役割
ほぼすべての細胞が機能するためにはATPによるエネルギーが必要です。
ATPがないと細胞は生き残ることができず、死んでしまいます。
私たちの身体は一個一個の細胞によってできているので、すなわち私たちにとっても『死』を意味します。
つまり、細胞がATPをつくることは私たち自身にとっての生命線だということです。
ATPはエネルギー源としてではなく、DNA(デオキシリボ核酸)やRNA(リボ核酸)の材料としても使われています。
3.1.ATPからエネルギーが放出されるときの化学式
上記反応式のように、ATPからリン酸が外れることによってエネルギーが発生します。
(H3PO4がリン酸です)。
この発生するエネルギー(7.3kcal)が、生命の維持に使われています。
- 基礎代謝と新陳代謝→「基礎代謝と新陳代謝とは何か?違いを簡単にわかりやすく説明しました」
- 筋肉を動かす、呼吸をする、心臓を動かす、体温を維持する
- 脳の活動
- 細胞内へのイオンや栄養物質の取り込み
- ホルモンや酵素の分泌
- などなど・・・
4.ATPの材料

ATP(アデノシン三リン酸)をつくっている場所は細胞内でして、そのうちのほとんどは、ミトコンドリア内(95%以上)でつくられます。
そして、ATP(アデノシン三リン酸)の主な材料は、三大栄養素の「糖質」「脂質」「たんぱく質」です。
このうち、「糖質」と「脂質」が主にATPをつくるための材料として使われています。
- 糖質
- 脂質
というわけで今回は以上です。
ATPをつくるための全体像は下記記事で詳しく解説しています。