【簡単】ATP産生の仕組み(解糖系,クエン酸回路,電子伝達系)をわかりやすく解説

「ATP(アデノシンリン酸)ってどういう仕組みでつくられるの?そのシステム(解糖系、クエン酸回路、電子伝達系とか)について、大まかな流れを知りたいな」

この疑問に答えます。

本記事の内容

  • ATP産生の仕組みには、解糖系、クエン酸回路、電子伝達系の3種類があります
  • ATPがつくられる場所と材料
  • 糖質を控えれば痩せるシンプルな理由

私たちの身体がエネルギーとして使うことができるのは、基本的にATP(アデノシン三リン酸)という物質です。

【簡単】ATP(アデノシン三リン酸)とは何?構造や意味などを分かりやすく説明してみた

2018年6月18日

食べ物からエネルギーを得ていると思っている人がいるかもしれませんが、実際には、食べ物に含まれているエネルギーを、ATPという物質にいったん変換したうえで、そのATPを分解することでエネルギーを得ています。

今回は、そんな重要な物質であるATP産生の仕組み(解糖系、クエン酸回路、電子伝達系)と大まかな流れを簡単に解説したいと思います。

ATP産生の仕組みは、解糖系、クエン酸回路、電子伝達系の3種類があります

私たち人間は、60~100兆個ともいわれる細胞の塊です。

この1つ1つのすべての細胞内でATPはつくられています。

上の図は細胞をかなり簡易的にあらわした構造図です。

細胞は細胞膜という膜におおわれており、細胞内部には細胞質基質という液体成分が入っています。この中に、

  • 細胞小器官
    (ミトコンドリア、小胞体、ゴルジ体、リソソームなど)

が浮かんでいます。

細胞内のミトコンドリアを拡大すると・・・

細胞小器官の1つである、ミトコンドリアを拡大したものが、下の図です。

楕円形のオレンジで囲われたところが、ミトコンドリアです。

ATPは、細胞内の以下の2つの場所でつくられています。

  1. 細胞質基質
  2. ミトコンドリア

ATPをつくるための3つの仕組み

このATPをつくるための仕組みはには、以下の3つがあります。

  • 仕組み①:解糖系
  • 仕組み②:クエン酸回路
  • 仕組み③:電子伝達系
なお、ミトコンドリアをもっていない赤血球、もしくは激しい運動をしているとき(酸素が不足しているとき)には、解糖系のみの反応しかおきません。この場合は、解糖系によってつくられたピルビン酸は、最終的に乳酸になります。

ATPは、細胞内でつくられ、その細胞内で消費されます

先ほどにもいいましたが、ATPは細胞内(細胞質基質orミトコンドリア内)でつくられます。

そして、つくられたATPはその細胞内のでのみ消費されます(ATPは自産自消です!)。

1つ1つの細胞は、自分たちで消費するエネルギーは自分自身でつくっています。
つまり、ATPは地産地消です。

1つ1つの細胞が生きている=生物が生きているということ

1つの細胞でできているアメーバなどの生物は「単細胞生物」といいます。
一方、人間や動物、植物のように、たくさんの細胞でできた生物のことは「多細胞生物」といいます。

そして、私たち人間には60~100兆個という膨大な細胞でできている「多細胞生物」です。

つまり、私たち人間は細胞の塊だといえます。

その1つ1つの細胞において、必要な分のエネルギー物質(ATP)を自分たち自身でつくりだして、自分たちでつくった分は自分たちで消費して生きています。

がんばって生きている1つ1つの細胞に感謝しましょう。

ATPの材料は、糖質、脂質、たんぱく質です

私たちが生きていくために絶対必要なエネルギー物質であるATPを作るための材料は、もちろん食べ物です。

食べ物にはエネルギーが含まれていて、私たち人間はこのエネルギーを食べ物から取り出すことで生きています。

しかし、食べ物からは直接エネルギーを取り出すことはできません。

じゃあどうするのかというと、少し面倒なんですが、食べ物に含まれるエネルギーをいったん別の物質に変換しないといけません。

その物質が『ATP』というわけです。

食べ物に含まれるエネルギーは、ATPという物質にいったん変換する必要があります。

ATPを例えるとしたら、PASMOやSuicaです。

ATPを例えるとしたら、プリペイドカードのPASMOやSuicaのようなものです。
PASMOやSuicaはそのままでは使えず、現金をチャージしてからでないと使えません。

ATPもプリペイドカードと同じようなもので、私たち人間も食べ物に含まれるエネルギーをそのままの形では使うことができず、ATPにいったんチャージしてからでないと、使うことができません。

理論的には、現金さえあれば駅の改札は通ることができますが、実際にはPASMOやSuicaにチャージするか、あるいは切符を買ってから駅の改札を通ります。
ATPもこれと同じようなイメージをもってもらえればいいです。

そんな重要な物質であるATPの主な材料は三大栄養素である以下の3つです。

  1. 糖質
  2. タンパク質
  3. 脂質

※ ビタミンやミネラルは、ATPを作る過程において、補助的な立場でサポートしています。

ブドウ糖を例に、ATPを作る流れを説明します

ブドウ糖を材料にATPをつくる流れを説明します。

ATPをつくる大きな流れとしては、以下の3つの段階に分けることができます。

  • 段階①:解糖系
  • 段階②:クエン酸回路(別名:TCA回路、クレブス回路、トリカルボン酸回路)
  • 段階③:電子伝達系

復習になりますが、ATPをつくる場所は細胞内の、以下の2つです。

  1. 細胞質基質(細胞の液体成分)
  2. ミトコンドリア

解糖系:細胞質基質

ATPの合成は、解糖系からはじまります。

それでは、細胞の全体図に戻ります。

解糖系は、全ての細胞の細胞質基質でおこなわれています。

解糖系の反応は、酸素を必要としない嫌気状態でも起こる反応です。

細胞内に入ったブドウ糖は、細胞質基質という液体の中で解糖系によって代謝されます。

そして、最終的にブドウ糖は解糖系によって2モルのピルビン酸(もしくは乳酸)になります。
※ピルビン酸、あるいは乳酸のどちらができた場合でも、この過程で2モルのATPが作られます。

解糖系の反応をまとめたものが以下になります。

解糖系の反応式

  • C6H12O6+2NAD+
    → 2C3H4O3+2NADH+2H++2ATP

この式で重要な点は、C6H12O6(ブドウ糖)から、2個のC3H4O3(ピルビン酸)と2個のATPがつくられているところです。とりあえず、ここさえ押さえておけば問題ありません。

解糖系の反応は全部で10段階あるんですが、それは下記の記事でまとめているので興味のある人はご覧ください。

解糖系の代謝経路のすべて【10種類の酵素の役割も併せて紹介】

2019年1月21日
解糖系では、1個のC6H12O6(ブドウ糖)から、2個のC3H4O3(ピルビン酸)と2個のATPがつくられています。

解糖系とはなに?できるだけわかりやすく簡単に説明をしています

2018年7月15日

クエン酸回路は、ミトコンドリアのマトリックスでおこなわれます

次はクエン酸回路についてみていきます。

解糖系でつくられた2個のピルビン酸は、ミトコンドリアの中にそのまま入っていきます。
それでは、細胞内の細胞小器官の1つである、ミトコンドリアを拡大します。

下の図が、ミトコンドリアを拡大したものです。

クエン酸回路は、この細胞内のミトコンドリアのマトリックス(ミトコンドリアの奥深くだと思ってください)でおこなわれます。

ミトコンドリアの中に入ったピルビン酸は、

  • ピルビン酸 → アセチルCoA → クエン酸

という流れで代謝されていき、クエン酸回路へと入っていきます。
※ ちなみに、クエン酸回路という名前の由来は、クエン酸回路の一番初めの反応(アセチルCoAとオキサロ酢酸の反応)でできる物質がクエン酸だからです。

クエン酸回路の反応は、下記のようにまとめることができます。

クエン酸回路の反応式

  • アセチルCoA + 3NAD+ + FAD + GDP + H3PO4 + 2H2O
    → 2CO2 + CoASH + 3(NADH+H+) + FADH2 + GTP

かなりややこしい反応式ですが、クエン酸回路の個別の反応式は下記の記事でまとめているのでどうぞ。

クエン酸回路の反応式【すべての反応式を一つずつ解説します】

2019年2月3日
クエン酸回路の反応に酸素は必要です(直接の反応には不要ですが、酸素がないとこの後につづく電子伝達系の反応が進まなくなるため、クエン酸回路の反応も進まなくなってしまいます)。

この反応の重要な点は、アセチルCoAからATPがつくられるということと、NADH+H+やFADH2といったエネルギーを持っている物質がつくられているということです。
※ GTPは、ADPにリン酸基をわたしてATPになることが可能です。
※ NADH+H+とFADH2は、電子伝達系に運ばれて、電子とH+を渡し、ATP合成に利用されます。

クエン酸回路とはなに?できるだけわかりやすい説明をしています

2018年7月25日

電子伝達系は、ミトコンドリアの内膜でおこなわれます

クエン酸回路によってつくられたNADH+H+やFADH2は、次に電子伝達系に運ばれて、そこで代謝を受けてATPがつくられます。
※電子伝達系は、ミトコンドリアの内膜(ミトコンドリアの表面近くにあると思ってもらえればいいです)にあります。

電子伝達系の反応式

  • 10NADH+10H++2FADH2+6O2 → 10NAD++2FAD+12H2O+28ATP

この反応で重要な点は、NADH+H+やFADH2から、28個のATPと水(H2O)がつくられていることです。

式からわかるとおり、解糖系やクエン酸回路に比べて大量のATP(28個も!)をつくることが可能です。

電子伝達系で大量のATPがつくられています。

簡単にわかりやすく電子伝達系を説明してみました

2018年8月19日

1個のブドウ糖から約32個のATPがつくられます

ここまで、「解糖系→クエン酸回路→電子伝達系」におけるブドウ糖の代謝をみてきました。
この過程で、最終的に1個のブドウ糖から、約32個のATPができます。

内訳は、以下のとおりです。

1個のブドウ糖からつくられるATPの量

  • 解糖系で2個のATP
  • クエン酸回路で2個のATP
  • 電子伝達系で28個のATP

痩せたければ、糖質を控えるべきその理由

ここまでの説明で、ブドウ糖を材料にATPを作る流れをみてきました。おそらく多くの人は、このブドウ糖をメインの材料にしてATPをつくっているはずです(現代人は、炭水化物の食べ過ぎなので・・・)。

しかし、ATPの材料には、糖質(ブドウ糖)以外にも、脂質とタンパク質があることを忘れてはいけません。

特に、脂質はATPをつくるための効率が非常にいいです。

どれくらい効率がいいのかというと同じ量のブドウ糖と脂肪を比べた場合・・・

  • 1個のブドウ糖を材料にATPを作った場合
    →32個のATPがつくられます
  • 1個の脂肪を材料にATPを作った場合
    →106個のATPがつくられます

脂肪を材料にした場合、ブドウ糖を材料にしたときと比べて、およそ3.3倍のATPを作ることが可能です。

中性脂肪を材料にATPをつくる場合は解糖系が不要です

ATPの材料となる脂質の種類はというと、中性脂肪といわれる種類のものです。

いわゆる、私たちがぜい肉とよんでいるものといえばイメージしやすいかと思います。

脂質とは?その定義と種類を簡単にわかりやすく解説してみた

2017年12月18日

ブドウ糖をATPにするためには、必ず解糖系からスタートしていました。

しかし、中性脂肪の場合、解糖系を介さずに、直接、クエン酸回路に入って、ATP合成の反応が進みます。

ここがブドウ糖と中性脂肪との大きな違いです。

ようするに、解糖系とは違う経路で、中性脂肪はATPの合成が始まるということです。

注意点:甘いものは控えるべし

しかし、身体に蓄えられているぜい肉である中性脂肪をATPの材料とするためには、注意点が1つだけあります。

それは、身体に糖質(ブドウ糖)が不足していることです。

身体に十分なブドウ糖があるときには、解糖系によるブドウ糖のほうの反応が優先的に進んでしまいます。

なので、中性脂肪を消費(つまりは痩せるということ)しにくくなります。

ですので、痩せたければ、糖質はできるだけ控える必要があるということです。

原理的には、これが甘いものや白米、麺類を控えると痩せるシンプルな理由です。

まとめ

それでは本記事の内容を簡単にまとめます。

ATPがつくられる場所

  • 細胞内の細胞質基質
  • 細胞内にあるミトコンドリアの、マトリックスと内膜

ATPをつくるための3つのシステム

  • 段階①:解糖系(2個のATPが作られます)
  • 段階②:クエン酸回路(2個のATPが作られます)
  • 段階③:電子伝達系(約28個のATPが作られます)

代謝についてさらに学びたい人

代謝についてさらに詳しく知りたい人は、上記の本がおすすめです。

難しい数式は一切ありません。

物語的な感じで代謝を説明しているので、専門的な知識が一切なくても代謝の奥深さを学ぶことができて、個人的にはかなりの名著だと思います。

というわけで、今回は以上です。

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