「ジュースを飲み過ぎて身体がだるい本当の理由」と「ペットボトル症候群の正しい説明」

1.ペットボトル症候群ってなに?

ペットボトル症候群とは

「ペットボトル症候群」の正式名称は「清涼飲料水ケトーシス」です。
糖尿病の自覚がない人が、糖尿病の症状の一つである「喉の渇き」のため、10%程度の糖分を含む清涼飲料水を1ヵ月以上にわたって毎日1.5L以上も多飲すると、急激に血糖値が上がってケトーシスになる場合があります。このような患者に名づけられた病名です。

1982年の日本糖尿病学会において初めて発表されて以降、医学会でも認識が広まりましたが、現時点では全国的な調査は実施されておらず、その実態はまだはっきりしていません。

引用:日本コカ・コーラ株式会社

糖尿病の自覚のない人というのは、以下のうちのどれかに当てはまる人で、まだ自分が糖尿病だと認識していない人です。

  1. もともと糖尿病の素因をもっている人
  2. 境界型糖尿病レベルの人(もう少しで糖尿病になる人)
  3. すでに糖尿病の人

こういった人が、のどの渇きに耐えられず(糖尿病の人はのどが渇きやすいです)、甘ったるいジュースを大量に飲んでしまうと、ケトーシスという状態になってしまい様々な症状が出る、そのことをペットボトル症候群といいます。

1-1.発症メカニズム

  1. 高血糖になる
  2. のどが渇く
  3. 甘いジュースを飲む
  4. さらに血糖が上がる
  5. インスリンを分泌して血糖を下げる膵臓が疲弊
  6. インスリンが出なくなる
  7. 血糖が下がらなくなり、高血糖が持続(つまり、身体が血糖をエネルギーとして利用できなくなる)
  8. 血糖が高いままなので、さらにジュースが飲みたくなる
  9. 血糖をエネルギーとして利用できないので(インスリンが出なくなってる)、代わりのエネルギー源として、脂肪を分解してケトン体がつくられる
  10. ケトン体が増えることで、身体がアシドーシスになる
  11. 糖尿病性ケトアシドーシスを発症

ようするに、インスリンの作用能力が弱っている人が、ジュースを大量に飲んだことでケトアシドーシスになってしまったときのことを、ペットボトル症候群といいます(実はこれは間違いなんですが、それは記事の後半に書いてます)。

1-2.ケトアシドーシスとは

ここで、先ほどにでてきた言葉で、ケトーシス、アシドーシス、ケトアシドーシスの意味を説明したいと思います。

ケトーシスとは

ケトーシスとは、血中のケトン体(アセト酢酸、3-ヒドロキシ酪酸、アセトン)が多くなっている状態のことです。

アシドーシスとは

血液が酸性になっている状態を、アシドーシスといいます。

ケトアシドーシスとは

アシドーシスの原因が、ケトーシスであるときのことをケトアシドーシスといいます。
ケトアシドーシスでは、腹痛、吐き気、意識障害などが起きることがあります。

ケトン体は酸性物質なので、その量が体内で増えすぎるとケトアシドーシスになって、危険な状態になるといわれていますが、実はこれは間違いです(理由は記事の後半で書いています)。

 

2.ペットボトル症候群の原因

2-1.一般的に考えられている原因

ここまでの説明で、ペットボトル症候群の一般的な原因をまとめると以下のようになります

  • 一般的に考えられているペットボトル症候群の原因(実はこれは間違いです)

糖尿病の自覚のない人が甘いジュースを飲み過ぎることによって血糖値が急激に上がります。あまりの高血糖状態によって、血糖値を下げるインスリンが十分に機能しなくなり(※この理由は記事の最後にある補足:糖毒性をみてください)、一時的に身体がブドウ糖をエネルギー源として使えなくなってしまいます。

ブドウ糖をエネルギーとして使えない代わりに、エネルギー源として脂肪を分解してケトン体という物質がつくられます。ケトン体は酸性度が高いので、これが増えすぎるとケトアシドーシスになってしまい、吐き気、疲労感、眠気などの症状がでます。

2-2.ペットボトル症候群の本当の原因

血中ケトン体濃度が上がることで、ケトアシドーシスなってしまうことが、ペットボトル症候群であると、ここまで説明してきました。

 

しかしこれは間違いです。

 

血中ケトン体濃度が高くても『ケトアシドーシス』にはならないと多くの医師が述べています。

そのうちの一人、宗田哲男医師はこのことを明確に否定されています。

アシドーシス(酸性血症)とは、血液の酸性度が高くなりすぎた状態で、症状としては、吐き気、嘔吐、疲労感や脱力感に始まり、眠気、そしてひどくなると意識が朦朧としてきて、吐き気が強くなります。そのまま放っておくと、やがて血圧が下がり、ショック、昏睡、死にいたる、とされています。

しかし、このような症状は、ケトン体値が数千あっても、まったく起きていません。つまり、間違いの1点目として、

①「アセト酢酸とβ-ヒドロキシ酪酸は強い酸だから、アシドーシスになる」というのは間違いである。

引用:ケトン体が人類を救う 糖質制限でなぜ健康になるのか (光文社新書) p130

これは実際に、宗田哲男医師が長年臨床の現場で患者さんを診ていた症例をもとに話しておられます。

私の診た症例では、Ⅰ型糖尿病でケトン体値が5000を超えていても、まったく危険ではありませんでした。Ⅱ型糖尿でも5000を超えていた方もいますし、正常妊婦で7000を超えてお産をした方もいます。しかし、通常はそのような数値の場合、「ケトアシドーシス」になると言われます。

引用:ケトン体が人類を救う 糖質制限でなぜ健康になるのか (光文社新書) p128

ようするに、ペットボトル症候群の症状の原因はケトン体ではないということです。

 

「じゃあどうしてペットボトル症候群によって、身体がだるい、眠気がする、重症化すると意識がなくなるのか?」

 

(前略)とくに、ペットボトル症候群は、激しく高血糖です。ケトン体も出てはいますが、これは意外に高くありません。意識がおかしくなったりして発見されますが、その本当の理由は「ケトーシス」(高ケトン血症)ではなくて、「高血糖」なのです。

引用:ケトン体が人類を救う 糖質制限でなぜ健康になるのか (光文社新書)p131

つまりペットボトル症候群の原因はケトン体ではありません。

糖質の摂り過ぎによって血糖値を下げることが出来ず、高血糖になってしまうことがペットボトル症候群の本当の原因だということです。

なので、ペットボトル症候群になる人は、インスリンの分泌能力が下がっている糖尿病予備軍や糖尿病の人というわけです。

糖尿病の自覚のない人が、大量の糖質をとってしまったがゆえに、大量の血糖を処理することができず高血糖状態になってしまうことが問題なわけです。

これがペットボトル症候群の本当の原因です。そういう人は、血糖値が400mg/dlから600mg/dくらい、中には1000mg/dくらいにまで上がる人もいます。

 

高血糖の症状

  • のどが渇く
  • 全身倦怠感
  • 吐き気、下痢、腹痛

 

ペットボトル症候群の症状

  • のどが渇く
  • 全身倦怠感
  • 吐き気、腹痛

このように、高血糖の症状とペットボトル症候群の症状はまったく一致しています。

 

最後に・・・

糖尿病の自覚のない人が、甘ったるいジュースを大量に飲んで、インスリンが十分に機能しなくなることによって起こる高血糖の持続こそが、ペットボトル症候群の正しい原因です。

 

インスリンが弱ってる人だけでなく、健康な人にとっても砂糖は体にとって毒なのでとくにのどごしが良くて飲みやすいジュースには注意してください。

「キンキンに冷えたコーラやファンタをがぶ飲みしたい!」という気持ちは分かりますが、そこはグッとこらえてください。

 

補足.糖毒性について

糖毒性とは、高血糖状態によって

  1. 膵臓のランゲルハンス島β細胞がダメージを受けて、インスリンの分泌量が低下
  2. インスリン抵抗性が増加

上記の理由によって、さらに高血糖状態が助長される悪循環のことです。

高血糖状態によって、インスリン分泌量の低下と抵抗性が増加するはっきりとした理由はまだ分かっていません。

それでは今回は以上です。最後まで読んでいただきありがとうございました。

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