
「病気とかあって、糖質制限ができない人っているの?」
糖質制限はめちゃくちゃ効果のある方法なので、できればみんなにやって欲しい食事法なんですが、病気があるがために、絶対にしてはいけない人というのもいます。
そこで、この記事では糖質制限を絶対にやってはいけない人をまとめました。
目次
1.糖質制限をやってはいけない人がいるのはなぜ?
糖質制限をしていない、一般的な日本人の理想的な栄養バランス
「日本人の食事摂取基準(2015年版)」による日本人の理想的な栄養バランスは、1歳以上の人を対象に以下のように設定されています。
栄養素 | 目標量(%) |
---|---|
炭水化物 | 50~65% |
脂質 | 20~30%(飽和脂肪酸は18歳以上において7%以下) |
タンパク質 | 13~20% |
糖質制限をしている人の栄養バランス
一方、糖質制限をすれば文字通り食事から糖質を大幅に減らし、その代わりとして脂質とタンパク質をしっかりとるようにします。
どの程度の糖質制限をやるかによってだいぶ違うんですが、参考までに。
栄養素 | 目標量(%) |
---|---|
炭水化物(糖質) | 12~41% |
脂質 | 38~56% |
タンパク質 | 21~32% |
こんな感じで、食事からとる栄養バランスがガラッと変わります。厳しい糖質制限では、糖質量が65%→10%くらいにまでガクンと落ちてしまいまうことになります。
多くの人はこれまでブドウ糖をメインのエネルギー源としてきたのに、ここまで厳しい糖質制限をするとケトン体というもう一つのエネルギー源がメインとなって、身体の代謝システムが根本的に変わります。
しかしもし、エネルギーを代謝する臓器に異常があったり、遺伝的な病気をもっていたり、あるいは何らかの薬(血糖を下げる薬)を服用していた場合、この変化に身体は対応することができず、低血糖状態になったり、病気がさらに進行したり等々の原因となってしまい、非常に危険です。
そこで、この記事ではそういったなんらかの理由で絶対に糖質制限をやってはいけない人をまとめました。
- 糖質制限の具体的な方法はこちらの記事で紹介しています。
>>>糖質制限ってどのくらいに糖質を抑えたらいいの?【江部康二先生の方法を紹介】
2.腎臓病の人
まだ透析を導入してなくて、ある程度以上進行した腎臓病をもっている人は、糖質制限をおこなってはいけません。
- その理由を説明します。
腎臓は身体にたまった老廃物をおしっこと一緒に出して、身体を綺麗な状態に保っています。 腎臓病の人はこの機能が低下してしまっています。
糖質制限をすると糖質を減らした分、脂質とタンパク質を多くとります。タンパク質は、エネルギーとして代謝されたあと、最終的に老廃物になります。正常な人は、この老廃物をおしっこと一緒に出すことで身体を綺麗な状態をたもっています。 しかし腎臓病の人は、老廃物をおしっこと一緒に出すという機能が弱まっているため、体に老廃物がたまってきてしまいます。 もし腎臓病の人が糖質制限をしてタンパク質をしっかりとるようになると、身体に老廃物がたまってきてしまって尿毒症(倦怠感、吐き気など)といわれる症状を引き起こしやすくなります。 また、腎臓病の人はこの老廃物をおしっことして出すときに腎臓に負担をかけるといわれているので、腎臓をさらに傷めてしまうことになります。 |
こういった理由から腎臓病の治療では、タンパク質の制限が必要になってきます。
そして腎臓病の人がタンパク質制限をする一番の目的は、いまある腎臓の機能をできるだけ維持することです。
日本腎臓病学会編「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013」によると、
『GFR(腎臓の機能を表す指標)が60ml/min以下になると、1日のタンパク質量を制限するように』としています。
具体的には、1日のタンパク質の摂取量を、体重1キロ当たり0.6~0.7グラムに制限することを推奨しています。例えば体重60キロの人で、36~42gのタンパク制限になります。
慢性腎臓病では、なぜタ蛋白制限が必要なの?
食事蛋白は老廃物の一種である窒素代謝物を作ります。正常の腎機能であれば、それを処理するのに十分な糸球体があります。しかし腎機能が低下していると、残った糸球体1つ1つがその能力を超えて処理をしようとします(糸球体過剰濾過)。この状態は長くは続かず、徐々にそれぞれの糸球体の濾過機能も落ちてきてしまうと考えられています。その負担を軽減するために行われるのが食事蛋白の摂取制限です。
2.1.腎臓が正常な人はタンパク質をたくさんとっても大丈夫?
「タンパク質からつくられた老廃物を腎臓が処理するときに、腎臓に負担がかかるんでしょ?それなら腎臓が正常な人でも、腎臓を悪くするんじゃないの?」
結論からいうと、腎臓が正常な人はとくにタンパク質を制限しなくても問題ありません。もう少し正確にいうなれば、腎臓が正常な人が、タンパク質を過剰に摂取して問題になるという根拠は、今現在(2018年4月現在)まだありません。
日本腎臓病学会編「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013」によると、GFR(腎臓の機能を表す指標)が60ml/min以上あれば、タンパク質制限が必要とは書かれていません。
(GFRが60ml/min以下になると、1日のタンパク質量を制限するようにとしています。)
2013年にアメリカの糖尿病学会では、「タンパク質を制限しても、腎機能の保護にはつながらない」と言い切っています。
また「日本人の食事摂取基準」(2015年、厚生労働省)によると、
たんぱく質の耐容上限量は、たんぱく質の過剰摂取により生じる健康障害を根拠に設定されなければならない。しかし現時点では、たんぱく質の耐容上限量を設定し得る明確な根拠となる報告は十分に見当たらない。そこで、耐容上限量は設定しないこととした。
耐容上限量とは、これ以上食べると健康被害が発生するリスクがゼロではなくなりますよ、という値のことです。
つまり、タンパク質を食べ過ぎても健康上問題が起こるという根拠がないということです。一方で、食べ過ぎても問題ないっていう根拠もまだありません。
一般的に腎臓が正常な人でもタンパク質を食べすぎると腎臓が悪くなる、といわれていますが、これは完全に過去のものです。
しかし最終的に糖質制限でどのくらいタンパク質をとるかは自己判断、自己責任でお願いします。
ちなみに僕はタンパク質に関してはとくに気にしてないです。明らかに食べ過ぎると異常ですよ、っていうエビデンスがあるなら話しは別ですけど現状では特別問題があるわけではなさそうです。ただ肉とかは食べ過ぎると便秘がちになるので、多少、量は控えて良質なお肉を楽しむようにしてます。
ここまでさんざんタンパク質は腎臓に悪いとか悪くないとか書いてきましたが、
タンパク質は食欲抑制効果というメリットがあるのでしっかり食べていきましょう。
食欲を抑える最も効果のある栄養素は、『タンパク質』だというのが研究でわかっています。
2011年におこなわれたアメリカの研究によると、タンパク質の食べる量が多ければ多いほど食べる量が減りました。だからといって肉や魚を食べすぎではいけないです。でも忘れることなくしっから食べましょう。
— とってぃ/とある病院のコメディカルブロガー (@totthi1991) April 6, 2018
糖質制限をしてるとどうしても満足感を感じにくく、食べ過ぎてしまうことが多かったけど、食事前に良質なたんぱく質と脂質をとるようにしたら食べる量が明らかに減った。
結果、糖質制限が簡単に楽にできるようになった。— とってぃ/とある病院のコメディカルブロガー (@totthi1991) March 30, 2018
3.糖尿病の人
インスリン注射や血糖降下薬を飲んでいる糖尿病の人は、低血糖のリスクがあるので、医師と相談が絶対必要です。
インスリン注射や血糖降下薬を減らしたり、中止したりする必要があるので、医師と相談してください。
こういった薬を使ってない人は糖質制限をしてもなんら問題ありません。
4.肝臓病の人
糖質制限をすると、血液中のブドウ糖が足りなくなります。脳や網膜などでは、ブドウ糖とケトン体が唯一のエネルギー源なので、ブドウ糖は最低限の量は確保されていなければいけません。その量が、血糖値100mg/mil前後です。血糖値が大きく低下してしまうと、脳が停止していまい、意識がなくなって非常に危険です。
そうならないために、血糖値を上げるシステムがあります。
それは肝臓での『糖新生』というシステムです。
糖新生とは? |
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糖新生は血糖値を維持するためのシステムのことです。つまりその名前とおり、ブドウ『糖』を新たにつくって血糖を上げるという機能をもっています。 主にタンパク質を材料にして糖新生をおこない、ブドウ糖をつくります。 |
その他の血糖値を上げるためのシステムとして、肝臓や筋肉のグリコーゲンを分解することでブドウ糖をつくることができるが、蓄えられてる量が少なくて、あくまで補助的なものです。
なので糖質制限をしている人は、食事からの糖質が少なくなって、主に『糖新生』というシステムが必須になってきます。
この『糖新生』は主に肝臓で行われています。なので肝臓に病気をもっている人は注意が必要です。
進行した肝硬変のある場合は糖新生の機能が不足しており、低血糖を招く恐れがあるので糖質制限食は適用できません。
5.膵臓病の人
日本での糖質制限の第一人者の江部康二先生のブログより引用します。
急性膵炎は重症の病気で入院が必要です。
しかし急性膵炎は、致命的経過をとることがある重症例を除き、一般的には可逆性であり、臨床的回復後約6カ月経過すると、膵臓は機能的・形態的にほぼ旧に復するとされます。従って、治ったあとは糖質制限食OKです。糖質制限食で膵炎になるということは、ありません。
(中略)
慢性膵炎は、再燃と改善(間欠期)を繰り返しながら、徐々に膵臓が慢性炎症のために壊れて膵機能不全に進行していく病気です。(中略)慢性膵炎は高脂肪食はなしとなりますので、糖質制限食は適応となりません。一方、慢性膵炎の確定診断には画像診断或いは組織診断が必須です。そのため、確定診断のついた慢性膵炎は、そんなにおられません。従って、確定診断がついていない、血清アミラーゼやリパーゼがやや高値で、腹痛もないレベルなら糖質制限食OKです。
とのことだそうです。確定診断された膵炎は、糖質制限禁止です。
6.長鎖脂肪酸代謝異常症
長鎖脂肪酸代謝異常症はまれな病気ですが、肉や魚などにふくまれる長鎖脂肪酸をうまくりようできないので、糖質制限は禁止です。
まとめ
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ということで、今回は以上です。
糖質制限を絶対してはいけない人をまとめました。参考になれば幸いです。
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