1.胸部レントゲンを読影する前に確認すべき事項
胸部レントゲンを読影する前に確認すべき事項は、以下の4つです。
- 体位の確認
→ 立位 or 座位(SIT) or 仰臥位(SUPINE) - 撮影法
→ PA像 or AP像 - まっすぐ正面を向いて撮影されているか
- しっかり吸気されているか
それでは順を追って説明していきます。
1.1.体位の確認
読影前には必ず撮影体位の確認をしましょう。
- 立位
- 座位
- 仰臥位
胸部レントゲンは基本的には立位で撮影します。
では、なぜ立位(PA像)がいいのかというと、肺野をもっとも広く撮影することができるからです。
① 腹部臓器に押されて横隔膜が上に上がってしまう(立位に比べて)
② ポータブル写真になるので、必然的にAP像となり、心陰影や縦隔が大きくなってしまう
といったデメリットがあります。
そもそも胸部レントゲンで一番大切なのは肺野です。
横隔膜が上に上がったり、心陰影や縦隔陰影が大きくなると、みえる肺野が狭くなります。
こういった理由から、胸部レントゲンでは仰臥位よりも立位が基本となります。
1.2.撮影法(PA像 or AP像)
- PA像(posterior-anterior)
→X線が背後(posterior)から前(anterior)に向かって抜けていきます。 - AP像(anterior-posterior)
→X線が前(anterior)から背後(posterior)に向かって抜けていきます。
基本的にPA像のほうがいいです。
理由は、PA像のほうが心陰影や縦隔が小さくなり、肺野が広くなるためです。
逆にAP像では心陰影や縦隔がPA像に比べて大きくなります。
1.3.きちんと正面を向いて撮影しているか
正面できちんと撮影されているかを確認します。
確認法は以下の2つです。
- 棘突起(きょくとっき)が左右の鎖骨内側端の中央にあるか
- 棘突起(きょくとっき)が気管支透亮像の中央にあるか
とくにポータブル写真(座位や臥位)ではそもそも撮影時に角度がずれていることが多いので注意してください。
1.4.しっかり吸気されているか
しっかり吸気されているかというのは横隔膜の高さで判断します。
具体的には、右横隔膜が、前肋骨であれば第6肋骨先端、後肋骨であれば第10肋間に位置します。
(ただし、これは一つの目安であり、個人差があります。)
これよりも上の位置に横隔膜があれば吸気不足の可能性があります。
また、過去の胸部レントゲン画像があれば、過去の画像とも比較します。
その他、横隔膜の位置が上に上がる理由としては以下のものがあります。
- 上葉の無気肺
- 腹部膨満
- 胸水
→胸水がたまって、見かけ上横隔膜が高く見えます。
横隔膜が上がると、心臓が押されて心陰影が大きくみえます。そのため、心胸比を大きく評価してしまい、心拡大があると判断してしまう恐れがあります。
横隔膜を下にして、しっかりと肺野を広くするため
通常の呼吸では肺全体に空気が入っていません。
そのため、意識的に息を大きく吸う必要があります。
これにより、肺野を充分拡張させて情報量を大きくすることができます。また、空気を肺にたくさん取り入れることで、血管影とのコントラストを良くなります。
さらに、横隔膜が下に下がり、より肺野を広くみることができます。
息を止める理由は、写真がブレないようにするためです。
というわけで今回は以上です。
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