クエン酸回路の反応式【すべての反応式を一つずつ解説します】

クエン酸回路の反応式に興味のある人「クエン酸回路の反応式をまとめて知りたい!」

本記事では、クエン酸回路の反応式をまとめたものを紹介しています。また個別の反応式についても解説しています。

こんにちは現役医療従事者のトッティ(@totthi1991)です。

本記事の内容

  1. 解糖系→クエン酸回路→電子伝達系の反応の流れ
  2. クエン酸回路の反応式まとめ
  3. クエン酸回路の個別の反応式の解説

本記事は下記の書籍を参考に執筆しております。

クエン酸回路の反応式

まず、グルコースは解糖系によってピルビン酸に代謝されます。

さらにピルビン酸は、好気的条件下においてアセチルCoAへと変えられてクエン酸回路、電子伝達系という順番で代謝されて、最終的にCO2とH2Oにまで分解されます。

まとめると、グルコースの代謝は以下の順番で進行していきます。

  • 解糖系 → クエン酸回路 → 電子伝達系

つまり、クエン酸回路はグルコースの代謝の2番目の反応系だということです。

解糖系の全体の反応式

グルコースからエネルギーが取り出される最初の反応系が解糖系です。

解糖系とは、ざっくりいえば1個のグルコースを2個のピルビン酸に分解する反応系です。

解糖系は10段階の反応で構成されております。この過程で、2個の「C3H4O3(ピルビン酸)」、正味2個の「ATP」、2個の「NADH+H+」がつくられます。

グルコースの解糖による反応式のまとめ(簡易版)

  • C6H12O6(グルコース)
    → 2C3H4O3(ピルビン酸) + 2ATP + 2(NADH+H+)

※ NADH+H+は電子伝達系に運ばれて、電子とH+を渡し、ATP合成に利用されます。詳しくは下記の記事をご覧ください。

解糖系によってつくられたピルビン酸(C3H4O3)は、好気的条件下において、ミトコンドリアに入ります。
そして、アセチルCoAへと変えられて、クエン酸回路に入っていきます。

  • C3H4O3(ピルビン酸) → アセチルCoA

※ ちなみに、ピルビン酸がアセチルCoAに変えられる過程で、NADH+H+が1個つくられます。

クエン酸回路の全体の反応式

クエン酸回路とは、アセチルCoAを反応の起点としたエネルギー生産のための反応系です。

この反応系によって、1個の「GTP」、3個の「NADH+H+」、1個の「FADH2」がつくられます。

クエン酸回路の反応式まとめ(簡易版)

  • アセチルCoA
    → GTP + 3(NADH+H+) + FADH2

クエン酸回路の反応式をより詳しく記述すると下式のようになります。

  • アセチルCoA + 3NAD+ + FAD + GDP + H3PO4 + 2H2O
    → 2CO2 + CoASH + 3(NADH+H+) + FADH2 + GTP

かなりややこしい反応式ですが、記事の後半で解説している個別のクエン酸回路の反応式をみていけば理解できるようになります。

※ GTPは、ADPにリン酸基をわたしてATPになることが可能です。

※ NADH+H+とFADH2は、電子伝達系に運ばれて、電子とH+を渡し、ATP合成に利用されます。

電子伝達系の反応

電子伝達系とは、解糖系やクエン酸回路でつくられたNADH+H+、FADH2から電子とH+を受け取り、ATPをつくる反応系です。

この電子伝達系の反応経路には2種類あります。

  1. NADH+H+から始まるもの
  2. FADH2から始まるもの

そして、

  • 1個のNADH+H+から2.5個のATPがつくられます。
  • 1個のFADH2から1.5個のATPがつくられます。

クエン酸回路の反応式を一つずつ解説します。

クエン酸回路は、上の図のとおり、9つの反応式でなりたっています。

それでは、それぞれの反応式について一つずつ解説します。

反応式①:アセチルCoA+オキサロ酢酸 → クエン酸

反応式①
アセチルCoA + オキサロ酢酸 → クエン酸
※ この反応式に必要な酵素:クエン酸合成酵素

アセチルCoAはクエン酸回路へと入っていきます。
そして、アセチルCoAのアセチル基(-COCH3)がオキサロ酢酸に移されて、クエン酸になります。

※ 補酵素Aは補酵素の一種であるため、クエン酸回路には取り込まれず、アセチル基(-COCH3)のみがクエン酸回路に取り込まれます。
(補酵素Aとアセチル基(-COCH3)は下の画像をご覧ください。)

補酵素Aについて詳しく知りたい人は下記の記事をご覧ください。

反応式②:クエン酸 → cis-アコニット酸

反応式②
クエン酸 → cis-アコニット酸
※ この反応式に必要な酵素:アコニット酸ヒドラターゼ

クエン酸は脱水され、cis-アコニット酸になります。

反応式③:cis-アコニット酸→イソクエン酸

反応式③
cis-アコニット酸 → イソクエン酸酸
※ この反応式に必要な酵素:アコニット酸ヒドラターゼ

cis-アコニット酸に水が付加してイソクエン酸になります。

反応式④:イソクエン酸 → α-ケトグルタル酸

反応式④
イソクエン酸 → α-ケトグルタル酸
※ この反応式に必要な酵素:イソクエン酸脱水素酵素

イソクエン酸は酸化的にに脱炭酸されて、α-ケトグルタル酸になります。

脱炭酸とは、カルボキシル基 (−COOH) を持つ化合物から二酸化炭素 (CO2) が抜け落ちる反応のことです。

この反応式では、NAD+によって水素原子2個が奪われます。

  • NAD+ + 2H
    → NADH + H+

また、この反応式で二酸化炭素(CO2)が発生します。

反応式⑤:α-ケトグルタル酸 → スクシニルCoA

反応式⑤
α-ケトグルタル酸 → スクシニルCoA
※ この反応式に必要な酵素:2-オキソグルタル酸脱水素酵素複合体

α-ケトグルタル酸は酸化的に脱炭酸されて、スクシニルCoAになります。

脱炭酸とは、カルボキシル基 (−COOH) を持つ化合物から二酸化炭素 (CO2) が抜け落ちる反応のことです。

この反応式では、補酵素の一種である補酵素A(CoA)が強制的に付加されます。

一般に、補酵素A(CoA)がついた化合物は不安定でエネルギーを放出しやすい状態です。

さらに反応式では、NAD+によって水素原子2個が奪われます。

  • NAD+ + 2H
    → NADH + H+

また、この反応式で二酸化炭素(CO2)が発生します。

ちなみに、2-オキソグルタル酸脱水素酵素複合体には、以下の5つの補酵素が必要です。

  1. CoASH
  2. NAD
  3. FAD
  4. リポ酸
  5. TPP

反応式⑥:スクシニルCoA → コハク酸

反応式⑥
スクシニルCoA → コハク酸
※ この反応式に必要な酵素:コハク酸-リガーゼ

スクシニルCoAは加水分解されてコハク酸になります。

この反応式で補酵素A(CoA)が外れ、この際に放出されるエネルギーによって、GDPとリン酸からGTPがつくられます。

GTPはADPをATPにすることができます。

反応式⑦:コハク酸 → フマル酸

反応式⑦
コハク酸 → フマル酸
※ この反応式に必要な酵素:コハク酸脱水素酵素

コハク酸は酸化されてフマル酸になります。

この反応式では、FADによって水素原子2個が奪われます。

  • FAD + 2H
    → FADH2

反応式⑧:フマル酸 → リンゴ酸

反応式⑧
フマル酸 → リンゴ酸
※ この反応式に必要な酵素:フマル酸ヒドラターゼ

フマル酸に水が付加されてリンゴ酸になります。

反応式⑨:リンゴ酸 → オキサロ酢酸

反応式⑨
リンゴ酸 → オキサロ酢酸
※ この反応式に必要な酵素:フマル酸ヒドラターゼ

リンゴ酸はNADによって酸化されてオキサロ酢酸になります。

この反応式では、NAD+によって水素原子2個が奪われます。

  • NAD+ + 2H
    → NADH + H+

以上で、クエン酸回路の反応は終了です。

このように、クエン酸回路の最後の反応ではオキサロ酢酸に戻ります。

そして、外部から新たに供給されたアセチルCoAと再び反応し、クエン酸回路の反応が再度繰り返されます。

クエン酸回路の反応式のまとめ

最後にクエン酸回路の反応式を以下にまとめます。

  • アセチルCoA + 3NAD+ + FAD + GDP + H3PO4 + 2H2O
    → 2CO2 + CoASH + 3(NADH+H+) + FADH2 + GTP

上記の反応式のとおり、アセチルCoAを起点としたクエン酸回路の反応が一周することで、

  • 3個のNADH+H+
  • 1個のFADH2
  • 1個の GTP

がつくられます。

そして、NADH+H+とFADH2はATP合成のために電子伝達系に運ばれて水素と電子を渡します。

電子伝達系については下記の記事をご覧ください。

というわけで今回は以上です。