クエン酸回路に酸素は必要か?不必要か?

「クエン酸回路に酸素は必要なの?」

本記事ではこの疑問に答えます。

こんにちは、現役医療従事者歴が約3年のトッティです。

本記事執筆で参考にした書籍

クエン酸回路に酸素は必要です

クエン酸回路に酸素は必要です。

ミトコンドリア内に酸素がなければ、クエン酸回路の反応は進行しません。

ただし、クエン酸回路の直接の反応に酸素は不要です

クエン酸回路の反応を進行させるために必ず酸素は必要です。

ただし、クエン酸回路でおこなわれる直接の反応に酸素は不要です。

  • クエン酸回路はミトコンドリア内で進行します。
  • ミトコンドリア内に酸素がなければ、クエン酸回路の反応は進行しません。
  • ただし、クエン酸回路の直接の反応に酸素は不要です。

クエン酸回路の反応式まとめ→直接の反応に酸素は不要です

クエン酸回路の直接の反応に酸素が不要な理由は、クエン酸回路の反応式をみれば一目瞭然です。

  • アセチルCoA + 3NAD+ + FAD + GDP + H3PO4 + 2H2O
    → 2CO2 + CoASH + 3(NADH+H+) + FADH2 + GTP

上記の反応式をみてわかるとおり、反応式に酸素(O2)はありません。

ですので、クエン酸回路の直接の反応に酸素(O2)は不要です。

クエン酸回路の個別の反応の詳細は下記の記事で詳しく解説しています。

クエン酸回路の反応式【すべての反応式を一つずつ解説します】

2019年2月3日

クエン酸回路に酸素が必要な理由

クエン酸回路に酸素が必要な理由、それは電子伝達系でつくられるNAD+やFADがクエン酸回路で必要だからです。

  • NAD+
  • FAD

NADH+H+やFADH2は電子とH+を運ぶ化合物です。
クエン酸回路でつくられたNADH+H+やFADH2は電子とH+を電子伝達系に供給して、そこでATPを合成しています。

電子伝達系は、解糖系やクエン酸回路でつくられたNADH+H+やFADH2から電子とH+を受け取って、効率的にATPをつくるためのシステムです。
ちなみに、電子とH+を運ぶ前の状態を酸化型、電子とH+を運んでいる状態を還元型といいます。

そして、電子伝達系でATP合成のために利用されたNADH+H+やFADH2は、酸化型のNAD+やFADに戻り、クエン酸回路で使いまわされます。

電子伝達系でつくられるNAD+やFADがクエン酸回路には絶対に必要です

下記の反応式のとおり、電子伝達系では大量のATPがつくられていますが、それと同時にNAD+やFADもつくられています。

電子伝達系の反応式まとめ

  • 10NADH+10H++2FADH2+6O2 → 10NAD++2FAD+12H2O+28ATP

ここでつくられたNAD+やFADが再びクエン酸回路で使いまわされています。

そして、上記の反応式をみていただくとわかりますが、この電子伝達系の反応を進行させるためには酸素(O2)が必要です。

ミトコンドリア内に酸素がなければ、電子伝達系の反応がとどこおり、NAD+やFADが不足します。
その結果、NAD+やFADが必要なクエン酸回路もとどこおるというわけです。

これが、クエン酸回路に酸素(O2)が必要な理由です。

電子伝達系でNADH+H+やFADH2からATPがつくられる過程は下記の記事で詳しく解説しています。

ミトコンドリアに酸素が存在しない場合(つまり、嫌気的条件下の場合)、乳酸がつくられます

ミトコンドリアに酸素が存在しない場合(つまり、嫌気的条件下の場合)、電子伝達系の反応は進行しません。
ですので、電子伝達系でNAD+やFADがつくられなくなります。

その結果、NAD+やFADを必要とするクエン酸回路の反応も進行しません。

つまり、嫌気的条件下の場合、クエン酸回路に原材料のアセチルCoAや酵素が充分にあっても、酸素がなければクエン酸回路の反応は進行しません。

解糖系は嫌気的条件下でも進行します

一方の解糖系は、酸素が不十分でもきちんと進行して、グルコース1個あたり、2個のピルビン酸がつくられます。

ただ、酸素存在しない場合、ピルビン酸は乳酸へと変わります。

  • 1個のグルコース(C6H12O6)→2個の乳酸(C3H6O3

例えば、ミトコンドリアをもたない赤血球や無酸素状態(激しい運動中の筋肉など)の細胞では、1個のグルコースは解糖系で2個の乳酸になります。
そして、乳酸は細胞外へ出て、グルコースの代謝はそこで終わります。

 

というわけで今回は以上です。

 

解糖系については下記の記事で詳しく解説しています。