風邪の原因は細菌ではなくウイルスだよというはなし【抗生物質は効かないです】

現役の医療従事者とってぃ(totthi1991)と申します。

病院で働いていますと、風邪で病院にこられる患者さんに高確率で処方される「風邪薬」というものがあります。

わたくしは風邪をひいてもとにかく寝込んで治すタイプの人間なので風邪薬に頼ることもないのですが、病院で働いていますと風邪薬が風邪の人にじゃんじゃん処方されるわけです。

そんなわけなんで僕個人は風邪薬を使うことはないんですが、患者さんによく出される風邪薬はほんとに効果があるの?ってところを調べてみました。

結論をいうと、一般的な風邪のときに処方される「総合感冒薬」「鎮咳薬」「去痰薬」、これらすべては単なる対症療法、つまり風邪の症状を抑えるだけのもので、完全を根本的に治す力はありません。

1.風邪の原因のほとんどはウイルス

風邪の原因の8~9割はウイルスです。

そのほか10~20%が細菌の感染によるものです。

風邪(正確には風邪症候群)の原因となる微生物

【ウイルス】
頻度が多い順に、ライノウイルス、コロナウイルス、RSウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルス

【細菌】
百日咳菌、溶連菌、クラミジア、マイコプラズマ

上記のものが有名ですが、風邪の原因となる微生物は100種類以上あるといわれています。

そして、風邪のほとんどはウイルス性の風邪です。

ウイルス性の風邪=一般的な風邪

ほとんどの風邪(風邪症候群)の原因は、ウイルスが喉にある上気道(鼻から喉にかけての空気の通り道)(鼻腔~咽頭~喉頭)に感染して急性炎症を起こした状態です。

普段、私たちが風邪といっているものは「ウイルス性の風邪」です。

ですので、私たちがよくかかる普通の風邪に抗生物質(ウイルスには効果なし)は効きません。

補足:細菌とウイルスの違い

・細菌:細胞膜をもつ微生物
・ウイルス:細胞膜をもたない微生物

補足:風邪症候群

風邪というのは専門的には「風邪症候群」といいます。
咳、熱、くしゃみ、のどの痛みが出たりする症状をまとめて「風邪症候群」といっています。
※ 症候群(シンドローム)・・・ いろいろな原因で同一の病態を呈することがある状態を指します。

風邪という特定の病気があるわけではありません。

1.1.風邪症候群の症状

風邪症候群の主な症状は以下のとおりです。

風邪の症状
  1. 鼻水
  2. 咽頭痛
  3. 嗄声(声枯れ)
  4. 喀痰
  5. 発熱
  6. 頭痛
  7. 倦怠感
  8. 食欲不振

とくに、ウイルス性の風邪では「咳・鼻水・咽頭痛」の3つの症状が急に、そして同時に起こります。
(これら3つの症状「咳・鼻水・咽頭痛」が同時に起こるのがウイルス性の風邪の特徴です。細菌感染の場合、これらが同時に3つの症状が出ることは稀です。)

症状が1つしかない場合でもウイルス性の風邪のことが多いです。

1.2.ウイルス性の風邪を治す薬は存在せず、ただ症状を和らげるだけ

ほとんどの風邪(風邪症候群)は、ウイルスが喉にある上気道(鼻腔、咽頭、喉頭)に感染して急性炎症を起こしたものです。

そして、風邪の原因となるウイルスは100種類以上はあるといわれ、DNAも変化しやすいです。

今、流行ってる風邪のウイルスのDNAを解析するだけでも時間がかかり、薬ができたころにはウイルスの遺伝子が変異しているため効きません。

ですので、ウイルス性の風邪を治すための薬は存在しません
(ただし、インフルエンザウイルスは別です。)

風邪のときに病院で出される風邪薬や市販で売られている風邪薬はすべて「風邪の症状を一時的にやわらげる」だけの「対症療法」です。

補足:対症療法
病気の原因に対してではなく、症状を抑えるための治療を行い、自然治癒能力を高め、かつ治癒を促進する療法のことです。 姑息的療法とも呼ばれます。

風邪薬には、風邪の症状の「咳、熱、咽頭痛、鼻水」といった症状を抑えるための成分が少量ずつ入っています。

ウイルスによる風邪のほとんどは自分の免疫で治るので、薬などは特に必要ありません。

2.風邪(風邪症候群)の症状の原因

風邪症候群の主な症状は以下のとおりです。

風邪の症状
  1. 鼻水
  2. 咽頭痛
  3. 嗄声(声枯れ)
  4. 喀痰
  5. 発熱
  6. 頭痛
  7. 倦怠感
  8. 食欲不振

とくに、ウイルス性の風邪では「咳(せき)・鼻水・咽頭痛(のどの痛み)」の3つの症状が急に、そして同時に起こります。
(これら3つの症状が同時に起こるのがウイルス性の風邪の特徴です。細菌感染の場合、同時に3つの症状が出ることは稀です。)

ウイルスに感染すると、白血球がウイルスと闘います。

このときに発熱が始まり、鼻水、倦怠感、頭痛といった風邪の症状がでます。

とくに、発熱はもっとも大切です。
なぜかというと、白血球の働きがもっともよくなる温度が38~39℃くらいのときだからです。
また、ウイルスは高温に弱く、増殖能力が下がります。

発熱が大切な2つの理由
  1. 免疫力が上がる
  2. ウイルスの増殖を抑えることができる
しかし、ここで安易に風邪薬を飲んでしまうと、熱は下がりますが、白血球の働きが弱くなります。

ですので下手をすれば風邪が長引いてしまうことになります。

3.当院でよく処方される風邪薬を紹介します

最後に、当院でよく処方される風邪薬を紹介したいと思います。

一般的なウイルス性の風邪の場合、解熱、鎮痛、咳止め、去痰薬などを複合した「総合感冒薬」が処方されます。

しかし、これだけでも症状が抑えられない場合は、「鎮咳薬」や「去痰薬」、「解熱鎮痛剤」が追加として処方されます。

総合感冒薬
  • PL配合顆粒(成分:サリチルアミド、アセトアミノフェン、無水カフェイン、プロメタジンメチレンジサリチル酸塩)
    →熱、鼻水、くしゃみ、のどの痛みなどの症状をやわらげます。
  • ピーエイ配合錠
    →熱、鼻水、くしゃみ、のどの痛みなどの症状をやわらげます。
補足

PL配合顆粒」と「ピーエイ錠」はまったく同じ成分です。
「PL配合顆粒」が先発品で、「ピーエイ配合錠」はジェネリック医薬品です。

鎮咳薬(せき止め)
  • メジコン錠(成分:デキストロメトルファン臭化水素酸塩)
    →咳を止めます。

メジコンには、気道の粘液を分泌させる作用もあるので去痰薬として使われることもあります。

去痰薬
  • ムコソルバン錠(成分:アンブロキソール塩酸塩)
    →痰の切れをよくしたり、鼻汁を出しやすくします。
抗ヒスタミン薬
  • フェキソフェナジン塩酸塩錠(主成分:フェキソフェナジン塩酸塩)
    →くしゃみ、鼻水、鼻づまりの症状を抑えます。

3.1.風邪薬の副作用

多くの風邪薬にはカフェインが入っているので、夜になかなか眠れなくなってしまう場合があります。

しっかり休まないと体力が回復せず、ウイルスと身体が戦えなくなりますので、睡眠不足は風邪を長引かせます。

3.2.風邪薬は効くの?

風邪薬を飲んで風邪が早く治るという医学的なデータはありません。

むしろ長引くとさえいわれています。

発熱は、免疫力を上げたり、ウイルスの増殖を抑えます。

また咳や鼻水は、ウイルスを体外に出すためにおこなっています。

3.3.風邪を早く治す方法

そもそも風邪はほっといても治ります。

ウイルス性の風邪症候群であれば、安静、水分・栄養補給により自然に治癒するためにウイルスに効果のない抗菌薬は不要です。鼻汁を減らす薬、解熱剤などの使用など、いわゆる対症療法を行います。しかし、扁桃に細菌感染を疑わせる分泌物が認められるような場合には、抗菌薬投与が必要になることもあります。

引用:一般社団法人 日本呼吸器学会

つまり、薬はただ単に症状を抑えるだけのもので、安静にしてゆっくり休んで自分の免疫で治しましょうということです。

さっさと風邪を治したいなら、安易に風邪薬は飲まず、身体をしっかり温めて、よく眠りましょう。

よく眠ることで体力が回復し、免疫力も上がります。

風邪を早く治すために大事なこと
  1. 身体をしっかり温める
  2. よく眠る

まとめ

風邪薬は風邪の症状を抑えるだけのもので、風邪を治す薬ではありません。

実際、風邪薬を飲んで風邪が早く治るという医学的なデータもありません。

風邪薬は、風邪の症状がひどすぎて仕事などの日常生活や症状が辛すぎる場合などに飲むようにしたほうがよさそうです。

少なくとも、少し風邪っぽいからと軽い気持ちで飲む必要はありません。

しっかり眠って休養をとって自分の免疫で風邪は治しましょう。