糖尿病の三大合併症の一つである末梢神経障害についてわかりやすく説明します

本記事では糖尿病の三大合併症のうちの一つである糖尿病性(末梢)神経障害についてできるだけわかりやすく説明しています。

まず、糖尿病の三大合併症は以下の3つになります。

糖尿病の三大合併症
  • 糖尿病性(末梢)神経障害
  • 糖尿病性網膜症
  • 糖尿病性腎症
上記の三大合併症は、細小血管障害ともいい、持続する高血糖によって毛細血管や細小動脈に障害が生じた結果、引き起こされるという共通点をもちます。

そして、三大合併症の中で糖尿病性(末梢)神経障害がもっとも初期の段階であらわれやすいです。

逆にいえば、神経障害だけが出始めたうちに対処をしておけば、そのあとの網膜症や腎症といった合併症を未然に防ぐことができるというわけであります。

補足
眼、腎臓、神経はとくに細い血管をもつため、高血糖による障害を受けやすいです。

1.神経とは?

糖尿病性(末梢)神経障害というのは、神経系の障害のことです。

もう少し詳しくいうと、神経系のうちの末梢神経系(脳と脊髄以外)の障害のことです。

いわゆる、足や手といった末梢にある神経のことです。

そんな末梢神経の働きは、主に以下の2つ「体性神経」と「自律神経」に分けることができます。

末梢神経の働き
  1. 体性神経
    1. 運動神経:身体の各部への意識的な運動命令を伝える神経
    2. 感覚神経:外部からの情報を中枢神経に送る神経
  2. 自律神経:血圧、呼吸、内臓、体温などの基本的な生命活動をコントロール
    1. 交感神経
    2. 末梢神経

糖尿病性神経障害では、「体性神経」と「自律神経」が障害されます。

神経系の構造や解剖をわかりやすく簡単に説明してみました

2018年11月1日

2.末梢神経障害について

末梢神経障害には、1つの末梢神経にのみ障害がでる「単神経障害」、非対称性に複数の末梢神経に障害がでる「多発単神経障害」、左右対称性に末梢神経に障害がでる「多発神経障害」があります。

末梢神経障害
  • 単神経障害(mononeuropathy)(単神経炎):末梢神経の1本が障害され、支配領域のみ症状があらわれます。
    (例:主な原因は圧迫であり手根管症候群や橈骨神経麻痺などが有名)
  • 多発単神経障害(multiple mononeuropathy)(多発単神経炎):単神経障害が多発し、左右非対称性に症状があらわれます。
    (例:血管炎、膠原病関連疾患、サルコイドーシスなど)
  • 多発神経障害(polyneuropathy)(多発神経炎):多発単神経障害と違い、全身の神経が左右対称に障害され、四肢末端によく症状があらわれます。
    (例:糖尿病、ギランバレー症候群、アミロイドーシス、ビタミン欠乏、尿毒症など)

3.糖尿病性(末梢)神経障害について

糖尿病性神経障害は、糖尿病になった後に早ければ2~3年、通常は5~10年で発症します。
(ただし、血糖コントロールを良好に保っていれば合併症を防ぐことができます。)

糖尿病性(末梢)神経障害とは

糖尿病性(末梢)神経障害とは「臨床症状の有無にかかわらず、糖尿病以外の原因疾患のない末梢神経の体性および自律神経系に起きる神経障害」のことです。

上記のとおりでして、糖尿病性(末梢)神経障害では、末梢神経の体性神経(感覚神経・運動神経)と自律神経(交感神経・副交感神経)がすべて障害されます。

糖尿病性(末梢)神経障害は、英語で「diabetic neuropathies」といい、「neuropathies(ニューロパチー)」という言葉は末梢神経障害を意味します。
ですので、アルツハイマー型認知症や脳血管障害など中枢神経障害は、通常糖尿病神経障害には含みません。

多発神経障害(DPN)

多発神経障害(DPN)では、全身の神経が左右対称に障害されます。
両下肢の末端の異常感覚、表在感覚の低下、アキレス腱反射低下・消失を特徴とします。

糖尿病性(末梢)神経障害で最も多いのが「多発神経障害(DPN)」です。

糖尿病による多発神経障害(DPN)では、手袋靴下型の感覚障害になることで有名です。

3.1.原因

糖尿病性神経障害の原因は主に以下の2つです。

糖尿病性神経障害の主な2つの原因
  1. 代謝性因子
  2. 血管性因子
1.代謝性因子

高血糖状態によって、神経細胞の中にソルビトールというブドウ糖の代謝産物が蓄積します。その結果、神経細胞が障害されます。

2.血管性因子

高血糖状態によって、細い血管(細小血管)が障害され、血液の流れが悪くなります。その結果、神経細胞に栄養や酸素がいきわたらなくなり、神経細胞が障害されます。

その他、いろんな因子がからみあって神経障害を発症するといわれています。

当然、高血糖状態の持続によって神経障害は悪化します。

3.2.頻度

引用:日本における糖尿病患者の足外観異常および糖尿病神経障害の実態に関する報告 平成20年3月

日本糖尿病対策推進会議の2006~2007年の調査では、糖尿病性神経障害は糖尿病患者の47.1%にみられ、そのうち59.7%が症候性で、残りの40.3%は無症候性でした。

3.3.症状

主に感覚障害と自律神経障害を呈します。

感覚障害
  1. 初期症状:痺れ
  2. 症状進行:感覚低下
  3. さらに進行:血管障害や感染などが加わり、潰瘍や壊疽をきたす
感覚障害は、四肢末端、特に下肢に多く、痺れ、痛み、感覚低下をきたします。
(糖尿病が原因の足の痺れは、基本的に両足からきます(両側性)。)

自律神経障害
  • 起立性低血圧(立ちくらみ)など
  • 勃起障害(ED)
  • 発汗異常
  • 脈拍の異常
  • 下痢・便秘、排尿障害
日本糖尿病対策推進会議の2006~2007の調査(1)では、もっとも多かった足の症状は「足がつる、あるいは、こむら返りが起こる」です。

以下「足の先がしびれる」「足の先がジンジン・ビリビリする」「足の感覚に異常がある」「足の先に痛みがある」の順で多かったらしいです。

3.4.診断

引用:糖尿病診療ガイドライン2016-糖尿病神経障害-

糖尿病性(末梢)神経障害に特異的な症状や検査は存在せず、診断基準も確立されていません。

したがって、神経症状と検査結果から総合的に診断する必要があります。

2002年に「糖尿病性神経障害を考える会」の提唱した診断基準(上記画像)は妥当性が高く、日常診療にも使えます。

足がしびれるといった症状は、整形外科の病気が原因であることも多く、糖尿病によるものかどうかをしっかり見極める必要があります。

4.糖尿病性(末梢)神経障害を予防するためには?

長期間、高血糖状態を放置していれば、糖尿病の合併症のリスクは上がります。

具体的には、Hba1cが6.5%以上の血糖コントロール不良状態が数年間続けば、合併症のリスクが高くなると考えていただければいいかと思います。

血糖コントロールが悪ければ、糖尿病を発症して早ければ2~3年、通常は5~10年で発症します。

そうならないために、血糖値のコントロールをしっかりしておく必要があります。

具体的には以下の値を目標にしてください。

  • 空腹時血糖値110mg/dl未満
  • 食後2時間血糖値180mg/dl未満
  • HbA1c6.5%未満
上記を満たしていれば、神経障害だけでなく、糖尿病の合併症を予防できるといわれています。

5.糖尿病性(末梢)神経障害の治療

糖尿病性(末梢)神経障害の治療の基本は、以下の2つです。

糖尿病性(末梢)神経障害の治療の基本
  1. 血糖コントロールを良好に保つこと
  2. アルドース還元酵素阻害薬(エパルレスタット)(アルドース還元酵素阻害薬は神経障害の進行を予防する効果あり)
症状が初期の神経障害の場合、血糖コントロールをよくするだけで、神経障害の症状を緩和させることができます。

感覚症状が強い場合は、対症療法として抗うつ薬(三環系、SNRI:デュロキセチン)、Ca2+ チャンネルα2δリガンド(ガバペンチン、プレガバリン)、抗不整脈薬(メキシチレン)
が日本有痛性糖尿病性神経障害治療ガイドラインに1第一選択薬として記載されています。

参考

糖尿病診療ガイドライン2016-糖尿病神経障害-

日本糖尿病対策推進会議-日本における糖尿病の足外観異常および糖尿病神経障害の実態に関する報告-

(株)テルモ-まんがでみてセルフチェックができる 糖尿病神経障害をよく知ろう-