
本記事では脂肪酸の合成の流れを分かりやすく解説します。
本記事の内容は以下のとおりです。
- 脂肪酸の合成の流れ【大きく3つの段階に分けることができます】
- 脂肪酸の合成が促進されるとき
- 主に脂肪酸を合成する組織
この記事を書いてる僕は、現役医療従事者として4年ほど勤務しています。
臨床の場では軽視されがちな、人体の生化学について多数記事を執筆しております。
今回の記事は、食べすぎれば肥満につながるということを、生化学的に解説しているので、これを読めば、どうして糖質などの栄養素が脂肪になるのかが分かるようになります。
ちなみに、本記事執筆に際し、参考にした書籍は以下になります。
目次
1.脂肪酸の合成の流れ

脂肪酸の合成は、複数のアセチルCoAが順番に結合していくようなイメージです。
- 脂肪酸の原材料はアセチルCoAです。
- アセチルCoAの炭素数は2です。
- 脂肪酸の合成とは、端的にいえば、炭素数を2つずつ増やしていく反応です。
脂肪酸ってなに?って人は下記の記事をどうぞ。
1.1.脂肪酸の合成の概要

脂肪酸の合成は3つの段階に分けることができます。
- 段階①:アセチルCoAが細胞質基質へ移動する
- 段階②:アセチルCoAからマロニルCoAへの変換
- 段階③:脂肪酸の合成
段階①:アセチルCoAが細胞質基質へ移動する

脂肪酸の原材料はアセチルCoAです。
そして、脂肪酸の合成がおこなわれる場所は細胞質基質です。
しかし、アセチルCoAはミトコンドリア内でつくられますが、アセチルCoAのままではミトコンドリアから細胞質基質へと移動することができません。
そのため、一旦、クエン酸回路を経由してアセチルCoAをクエン酸に変換します。
※ クエン酸は、ミトコンドリアの膜を自由に移動することができます。
- アセチルCoA + オキサロ酢酸
→ クエン酸
そして、細胞質基質へ移動したクエン酸は、アセチルCoAとオキサロ酢酸に分解されます。
- クエン酸
→ アセチルCoA + オキサロ酢酸
※ 上記の反応を触媒する酵素は、ATPクエン酸リアーゼです。
段階②:アセチルCoAからマロニルCoAへの変換

脂肪酸の合成とは、端的にいえば炭素数2のアセチルCoAが順番に結合していき、炭素数を2つずつ増やしていく反応です。

しかし、アセチルCoA同士では結合することができません。
一工夫が必要となってきます。
その一工夫というのが、アセチルCoAをマロニルCoAへの変換です。
※ マロニルCoAとは、アセチルCoAに二酸化炭素が付加した化合物です。
- アセチルCoA + CO2
→ マロニルCoA
上記の反応を触媒する酵素はアセチルCoAカルボキシラーゼです。
マロニルCoAの形になってようやく、アセチルCoAと結合することができるようになります。
※ ちなみに、マロニルCoAの炭素数は3ですが、アセチルCoAと結合する際に、二酸化炭素(CO2を放出するため、炭素数は1減ります。)
段階③:脂肪酸の合成

アセチルCoAとマロニルCoAが結合して、炭素数4の脂肪酸が合成されます。
- アセチルCoA + マロニルCoA
→ 炭素数4の脂肪酸
※ 上記の反応を触媒する酵素は、脂肪酸合成酵素複合体で、7種類もの酵素の複合体です。
ちなみに、脂肪酸の合成の反応は、細かく分けると以下の4つのステップで構成されています。
- ステップ①:脂肪酸合成酵素複合体を介したアセチルCoAとマロニルCoAの結合
- ステップ②:二酸化炭素の放出
- ステップ③:水の放出
- ステップ④:電子伝達体のNADPH2から水素をもらう
そして、アセチルCoAとマロニルCoAから合成された炭素数4の脂肪酸に、新たなマロニルCoAが反応して、さらに炭素数が2つ増えた脂肪酸が合成されます。
(上記4つのステップを再度繰り返します。)
- 炭素数4の脂肪酸 + 新たなマロニルCoA
→ 炭素数6の脂肪酸
※ 上記の反応を触媒する酵素は、脂肪酸合成酵素複合体です。
この繰り返しで、炭素数は2つずつ増えていきます。
最終的に、炭素数16のパルミチン酸まで合成されたら一旦脂肪酸の合成の反応は打ち止めです。
その後、パルミチン酸より炭素数の多い脂肪酸や不飽和脂肪酸といったその他の脂肪酸に変換されます。
2.脂肪酸の合成が促進するとき
脂肪酸の合成が促進するときは、ミトコンドリアに過剰にアセチルCoAが供給されたときです。
つまり、食べすぎればミトコンドリア内に大量にアセチルCoAが発生するため、アセチルCoAはミトコンドリアから細胞質基質に出て、脂肪酸の合成に使われやすくなります。
そして、つくられた脂肪酸の多くは中性脂肪へと変わり、細胞内に蓄えられます。
逆に、アセチルCoAの供給がすくないとき、たとえば絶食時などは、アセチルCoAはクエン酸回路で代謝されてATP合成に使われます。
つまり、エネルギーとして消費されます。
3.主に脂肪酸を合成する組織
脂肪酸の合成は、さまざまな組織でおこなわれますが、主に以下の組織で活発です。
- 肝臓
- 脂肪組織
- 乳腺(授乳期)
というわけで今回は以上です。