糖質制限中に消費されるグリコーゲンの役割とは?どれくらいの量が貯蔵されてるの?

「糖質制限中には、身体に貯蔵されてるグリコーゲンが消費されるって聞いたけど、グリコーゲンってそもそもなに?どれくらい貯蔵されているの?」

本記事ではこの疑問に答えます。

1.グリコーゲンとは?

グリコーゲンとは、たくさんのグルコースがくっついた多糖の一種で、動物におけるエネルギー貯蔵物質です。

1.1.グリコーゲンの構造

上の図のように、グリコーゲンは、多数のグルコースが不規則に枝状に分かれながら結合した構造となっています。

1.2.グリコーゲンとデンプンの違い

  • グリコーゲンは、グルコースのみがたくさん結合した多糖です。
    (動物における糖の貯蔵物質です。)
  • デンプンは、グルコースのみがたくさん結合した多糖です。
    (植物における糖の貯蔵物質です。)

上記のとおり、グリコーゲンもデンプンもグルコースのみが多数結合した物質で、ほぼ同じなんですが、両者の違いはその構造にあります。

そもそもデンプンは、アミロースというグルコースが直鎖状に結合したものと、アミロペクチンというグルコースが枝状に分かれながら結合したものとで構成されています。

デンプンの構成成分
  1. アミロース
    →グルコースがグリコシド結合によって直鎖状につながった構造(枝分かれはほんどなし)
  2. アミロペクチン
    →グルコースがグリコシド結合によって枝状につながった構造(房状の構造、規則正しい枝分かれ構造)

このうち、グリコーゲンはアミロペクチンに近いです。

アミロペクチンが規則正しい枝分かれ構造なのに対し、グリコーゲンは不規則な枝分かれ構造になっています。また、グリコーゲンはアミロペクチンに比べて分子も小さく、枝も短いです。さらにアミロペクチンのほうがグルコースが高密度に充填されています。

こういった違いによりグリコーゲンは水に溶けますが、アミロペクチンは水には溶けません。

これがグリコーゲンとデンプンの違いです。

2.グリコーゲンの役割

グリコーゲンの役割は、主に以下の2つです。

グリコーゲンの役割
  1. 血糖値の維持
  2. 筋肉のエネルギー源

2.1.血糖値の維持

グリコーゲンの役割の一つは血糖値の維持です。

食後2~3時間たち、血糖値が食前の値近くになると、グルカゴンやアドレナリンなどによって肝臓に蓄えられているグリコーゲンが分解されて、血中にグルコースが補給されます。

さらに絶食状態が継続すると、肝臓のグリコーゲンは枯渇し、血中へのグルコースの供給源は糖新生へと切り替わります

血糖値を上げるのは肝臓に貯蔵されているグリコーゲンのみです。
血中へのグルコースの補給は肝臓に貯蔵されているグリコーゲンが使われます。
筋肉にもグリコーゲンがありますが、グリコーゲンからグルコースをつくりだす酵素「グルコース6-ホスファターゼ」がないのでグルコースを合成することができません。つまり血中にグルコースを補給することができないということです。筋肉中のグリコーゲンは、グルコースの一歩手前であるグルコース6-リン酸から直接解糖系に進み、そのまま筋肉のエネルギー源として消費されます。

血糖値を維持しなければならない理由

私たちの身体は脂肪酸やケトン体をエネルギー源として利用できますが、細胞の中で唯一ミトコンドリアをもたない赤血球は、脂肪酸やケトン体をエネルギー源として利用できず、グルコースしか利用できません。

また、脳、網膜、生殖腺胚上皮などの一部の部位でもグルコースを主なエネルギー源としています。

こういった理由から、わたしたちは最低限度の血糖値を維持しておく必要があります。

補足
しかし、肝臓のグリコーゲンの貯蔵量はそれほど多くなく、仮に満タンに蓄えられていても8時間ほどで空になってしまいます。そのうえ、強度の高い運動をした場合はさらに早くなくなり、1時間~2時間ほど空になります。

そうなると今度は筋肉に含まれているアミノ酸を分解して血中にグルコースを補給します(これを糖新生といいます)。
糖新生とはなに?できるだけ簡単にわかりやすい説明をしています(1/2)

2.2.筋肉のエネルギー源

もう一つのグリコーゲンの役割は、筋肉のエネルギー源となることです。

グリコーゲンが貯蔵されているのは主に肝臓と筋肉ですが、肝臓のグリコーゲンは血糖値を維持するために利用されます。

これに対し、筋肉のグリコーゲンは、筋肉自身のエネルギー源として利用されます。

理由は、筋肉にはグリコーゲンからグルコースをつくりだす酵素「グルコース6-ホスファターゼ」がないためです。

ですので、グルコースの一歩手前の物質であるグルコース6-リン酸から直接解糖系に進み、そのまま筋肉のエネルギー源として利用されます。

つまり、筋肉中に貯蔵されているグリコーゲンは筋肉を動かすためにあるということです。

ポイント
  • 肝臓・・・血中にグルコースを供給できる
  • 筋肉・・・血中にグルコースを供給できない
補足
食後数時間経過した安静時では、筋肉は主に脂肪酸やケトン体エネルギー源としていてグルコースはあまり利用していません。
しかし、スポーツ選手でもない普通の人が激しい運動をすると、手っ取り早くエネルギー源にできる筋肉中のグリコーゲンが優先して使われます。そして、筋肉中のグリコーゲンが枯渇するとスタミナが切れてしまい、運動能力が大幅に落ちてしまいます。
(筋肉に貯蔵されているグリコーゲンは1200kcal程度しかなく、強度の高い運動なら1~2時間で枯渇してしまいます。)

3.グリコーゲンの貯蔵場所と貯蔵量

グリコーゲンの貯蔵場所は主に肝臓と筋肉の2カ所です。

補足
肝臓や筋肉だけでなく、ほとんどの組織にも微量ですがグリコーゲンは貯蔵されています。

食事によって血中に増加したグルコースは、全身の細胞のエネルギー源となりますが、余った分は主に肝臓と筋肉中に取り込まれ、グリコーゲンとなって貯蔵されます。

(ただし、グリコーゲンの貯蔵量にも限界があり、まだ残っているグルコースは中性脂肪の形で、主に脂肪組織に貯蔵されます。)

グリコーゲンの貯蔵量は、肝臓で120g程度、筋肉で300g程度です。

グリコーゲンの濃度としては、筋肉よりも肝臓のほうが高いんですが、筋肉のほうが量が多いので、全体としては筋肉に貯蔵されているグリコーゲンのほうが多いです。

エネルギーで換算しますと、グルコース1gが約4kcalですので、肝臓で約400kcal、筋肉で約1200kcalのエネルギーが蓄えられていることになります。

グリコーゲンの貯蔵量
  1. 肝臓・・・肝臓の重量の約8%までのグリコーゲンを貯蔵することができます。重さでいうと約120gです。
  2. 筋肉・・・筋肉の重量の約1%までのグリコーゲンを貯蔵することができます。重さでいうと約300gです。

というわけで今回は以上です。

 

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