2018年3月30日の毎日新聞 医療プレミアに『認知症リスクを上げる過度な糖質制限』という記事が掲載されました。
僕自身も糖質制限をしていているんですが、できることなら糖質をガッツリ食べたいです。なのでやるからにはしっかり効果が出てもらわないと困るわけです。
そんな中、なんと糖質制限を否定する記事がネットにあがったので、その真偽のほどを調べてみました。
目次
【毎日新聞の記事内容】
その① 高齢で糖尿病の人が糖質制限をすると、低血糖のリスクがあがり認知症になりやすくなる
一定の糖質制限が必要な人たちがいます。代表的な例が、血中のブドウ糖濃度(血糖値)が高くなる糖尿病患者です。中でも、食事を含む生活習慣が発症に大きく関わっている2型糖尿病患者は、糖質摂取量を抑える対応が必要です。
このように糖尿病患者には糖質制限が必要だといっている一方で、
ただし、いくら糖尿病であっても、糖質制限が行き過ぎると逆に問題が起こります。
糖尿病患者は血糖値を下げる血糖降下薬を服用している場合が少なくありません。近年、血糖降下薬の服用時には、血糖値が下がりすぎる低血糖発作を起こさないようにすることが重要視されています。
低血糖を起こしている高齢者の糖尿病患者は、糖尿病にかかっていない人と比べて、アルツハイマー型認知症発症の危険性が約1.6~2.4倍になることも分かってきたのです。(中略)糖質が脳のエネルギー源であることから考えれば、脳細胞が減少している高齢者の場合は、若者よりも低血糖が脳にダメージを与え、それが認知症につながるという理論は極めて妥当です。
「低血糖を起こした高齢の糖尿病患者と、糖尿病でない高齢者の人を比べると、前者のほうがアルツハイマー型認知症になりやすい」
とのことです。
その② 若い人でも糖質制限は辞めるべき
極端な糖質制限で体内のブドウ糖の量が低下すると、ヒトの体は脂肪や筋肉を分解することで糖質を作り出し、それをエネルギー源にします。これを糖新生と呼びます。
確かに、脂肪や筋肉が分解されればダイエットはできるでしょう。しかし、糖新生はあくまで非常装置です。(中略)
緊急事態を乗り切るために脂肪や筋肉を燃料に変えているわけですから、長期間続ければ当然体に異常が生じます。
脳の働きは鈍り、めまいや冷や汗が止まらなくなり、最悪の場合は低血糖発作で意識を失ってしまいます。
「糖新生はあくまで非常装置なので、日常的に長時間使い続けると体に異常が生じる」
とのことです。
その③ 高齢者の糖質制限は若い人よりもさらに危険
高齢者の多くは筋肉量が低下しています。極端な糖質制限による糖新生が起きた場合、筋肉量はさらに低下し、著しく心身機能が低下した状態の「フレイル」に陥りやすくなります。
フレイルとは、簡単にいうと「高齢者の虚弱」のことで、身体的にも精神的にも衰えて活力がなくなってしまった状態です。フレイルになると、病気になりやすかったり、死亡率が高くなったり、介護が必要になりやすかったり、いろんな問題が起こりやすいです。
「高齢者の糖質制限による糖新生は、筋肉量の低下を招き、フレイルという状態に陥って病気になったり死亡率が上がる」
とのことです。
その④ 糖尿病だろうと糖尿病でなかろうと、総摂取カロリーの6割は糖質からとる
1日に必要なカロリー摂取量は、年齢や活動性、病気の有無などによって異なります。しかし、カロリー摂取量の約6割は糖質から摂取することが望ましいとされています。これは糖尿病の患者も同様です。
(後略)
「糖尿病のあるなしに関わらず、若い人だろうと高齢者だろうと、カロリーの6割は糖質からとる必要がある」
とのことです。
【この記事に反論してみました】
その① 高齢で糖尿病の人が糖質制限をすると、低血糖のリスクがあがり認知症になりやすくなる
工藤千秋先生は、「糖質が脳のエネルギー源である」といっておられます。もちろんこの言葉自体に間違いはありません。
しかし、脳はブドウ糖以外にもケトン体をエネルギーとして利用できます。
にもかかわらずこの記事では、脳のもう一つのエネルギー源であるケトン体には一切触れられていません。
脳はケトン体もエネルギー源にできます。
また、わたしたちは食べ物から糖質をとらなくても、糖新生によってブドウ糖をつくることができます。
(補足) |
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ちなみに、人間の脳に必要な糖質の量は、1時間で4gといわれています。そして糖新生でつくれる糖質は1日180gといわれています。脳が1日に必要とする糖質が4g×24時間=96gなので、脳のエネルギー源だけであれば、余裕でまかなえます。もちろん、エネルギーを必要としているのは、脳だけじゃないので、糖新生だけじゃ足りないんですが、そのときにはケトン体が大活躍します。 |
糖新生という働きがあるので、糖質をとらないから、低血糖になるということはありません。
糖尿病の人が低血糖になるほとんどのケースが、インスリン注射の過剰やSU剤の過剰投与です。糖質制限をすれば、そもそも薬がいらなくなるか、最小限に抑えられるので、低血糖もほとんど起こらなくなります。
その② 若い人でも糖質制限は辞めるべき
工藤千秋先生は、「糖新生は非常装置」といっておられます。江部康二先生が自身のブログで、この発言に対して反論しておられています。そちらが参考になりますので引用させていただきます。
『糖新生』は非常装置ではありません。
(中略)
脳はケトン体もエネルギー源として利用できますが、赤血球はミトコンドリアを持っていないので、
唯一ブドウ糖しかエネルギー源にできません。
この赤血球のために、人類は700万年の進化の歴史を含めて常に日常的に糖新生をしてきたのです。
つまり糖新生は非常装置なんかではなく、人類が生きていくための必須の装置で日常的に、それこそ夜寝ているときでも行っています。
その③ 高齢者の糖質制限は若い人よりもさらに危険
こちらも江部康二先生がブログで反論されていますので、そちらを引用させていただきます。
(前略)
糖質制限食の場合、食事からのたんぱく質が相対的に多いので、プールのアミノ酸が不足することはないので、フレイルにもなりにくいです。
『プールのアミノ酸』とは? |
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身体の筋肉は常に破壊と合成がおこなわれています。破壊された筋肉はアミノ酸となって血中に入ります。食べものから摂ったアミノ酸は、腸で吸収され血中に入ります。これら分解されたアミノ酸と、食べものからとったアミノ酸を原料にして、筋肉がつくられます。 このように、分解由来のアミノ酸と食べもの由来のアミノ酸をあわせたものを、『プールのアミノ酸』といいます。 |
ようするに、筋肉から分解されたアミノ酸だろうと、食べものから吸収されたアミノ酸だろうと、アミノ酸ということに変わりはなく、筋肉の材料にできるということです。なのでこのアミノ酸をいっしょくたにまとめて、プールのアミノ酸という風に呼んでるわけです。
その④ 糖尿病だろうと、そうでなかろうと、総摂取カロリーの6割は糖質からとる
工藤千秋先生の最終的な結論が、「糖尿病だろうと、そうでなかろうと、年齢が違っても、どれだけ運動していようとも、総摂取カロリーの6割は糖質からとることが望ましい」と結論づけています。
しかしここまでで説明したように、工藤千秋先生が言っていることは根拠が弱いといわざるおえません。
なんだか糖質制限を批判したいという思惑ありきな記事にもみえます。
まとめ:糖質制限の批判は的外れだった
記事に書かれていることは、なにもよく知らない人が読むと真実なようにも思えます。
しかしこのニュース記事は大事なことをいっていなかったり(脳はケトン体をエネルギー源としてつかえるとか)、あまり根拠もなく言い切っていたり(糖新生は非常装置なので、日常的につかってるとヤバいよとか)、なんとなく世間の糖質制限ブームをせき止めたいがための、陰謀な気がしなくもないです。(ちょっと考えすぎですかね・・・)
もちろん、糖質制限のデメリットもどこかしらに隠れているとは思いますが、そのデメリットがあってるのか間違ってるのかというのはなかなか一般の人では判断しづらいというのが現実だとおもいます。
そのためには、自分でしっかり勉強するとか、信頼する人の話しをよく聞くとか、そのどっちかしかないと思います。ネット上には玉石混合の情報があふれていますので。
本記事で何回か引用させていただいた江部康二先生は、日本での糖質制限者を広めた第一人者です。この分野に関して長年研究されているので非常に参考になります。
著者のオススメの本のAmazonリンクを貼っておきますので興味のある人はぜひ読んでみてください。
ちなみにこの記事を書いた僕自身も糖質制限を実践しています。ちょっと日本ではマニアックな部類のグルテンフリーなんかもやってたり・・・。まぁいろいろ試行錯誤しながら試してます。
【まとめ】糖質を制限することで得られるメリット
1.糖尿病の予防
2.すでに糖尿病の人は、合併所の予防(腎不全、網膜症、神経症)
3.肥満の解消
4.高血圧改善
5.アルツハイマー病の予防
6.片頭痛改善
7.花粉症やアレルギー性鼻炎、喘息などのアレルギー性疾患の改善— とってぃ/とある病院のコメディカルブロガー (@totthi1991) March 31, 2018
糖質制限は危険かどうかは糖尿病患者が一番良く知っている。何故なら食後に血糖値を測っているから、何を食べたら血糖値が上昇するのか知っている。肉を400グラム食べても血糖値は上がらないが、ご飯200グラムで血糖値は250を超える。