
プロバイオティクスを摂ることで、うつ病が改善しただとか(1)、脳の感覚や感動といったエリアが活性化したりだとか(2)、メンタルにも良い影響があるとする研究報告が多いですので、健康にとってプラスなのは間違いないかと思います。
しかし、腸内細菌サプリなどのプロバイオティクスがそのまま腸内にとどまってくれるのか、それとも定期的に摂る必要があるのかというのはまだ現時点ではわかっていません(腸内細菌についてはまだわかっていないことが多いですので)。
そんな中、近ごろ発表された研究によりますと「半月ほど食事を変えても大人の腸内環境は変化しなかったが、子どもでは腸内環境に変化があった」とのことです(3)。
腸内環境にとって、普段の食事が大きな影響を与えているというのは、いうまでもないことですが、それに反する研究結果ということで聞き捨てなりません。
本記事ではこの研究報告を紹介したいと思います。
16日間、食事内容を変えても大人の腸内環境は変わらなかったが、子どもでは変化あり

これは、ラトガース大学のMaria Gloria Dominguez-Bello氏とベネズエラ科学調査機関のMonica Contreras氏らの研究チームがおこなった実験で、実験内容は以下のとおりです。
- 被験者は都市に住む大人5人と子供2人(4歳と7歳)
- 上記の計7人が、ベネズエラのボリビア州にあるイエクアナ村に16日間滞在する
(イエクアナ村は、狩猟、採集、農業などをおこない伝統的な暮らしをしている村) - 食事内容は以下のとおり(高食物繊維・低たんぱく・低脂肪食)
- キャッサバ(海外でよく食べられているイモの一種)やトモロコシといった穀物
- ベリー、プランテン(バナナに似た果物)、パイナップルなどの果物
- 魚、少量のジビエ肉(ジビエとは狩猟で得た野生動物の肉のこと)、卵など
- 上記の食事を1日に2回。1日中を通してキャッサバや果物をつまみ食いあり。
- 自然の概日リズムに合わせて生活
上記の実験をおこなった後、被験者の肌・口・鼻・便からサンプルを採取して調査をおこないました。
その結果が以下になります。
- 被験者である大人5人の腸内環境はほとんど変わっていなかった
- 被験者である子ども2人の腸内細菌の種類が増えていた
つまり、子どもであれば、高食物繊維・低たんぱく・低脂肪の食事をすれば腸内細菌の種類が増やせる可能性があるが、大人では腸内環境は変わらなかったということです。
被験者の少ない実験、かつ短期間(16日間)の変化をみているだけですので、エビデンスとしては弱いです。
しかし、未加工食品を食べるだけで腸内細菌の種類が増えるというのは興味深いところですが、大人ではまったく変化なしというのはなんとも残念な結果です。
この実験をおこなったDominguez-Bello氏によると
村の大人をニューヨークに連れてきて抗菌剤を与えたりマクドナルドで毎日食事をさせたりすれば、多様化は失われていきます。しかし、既に腸内細菌の多様性が失われている都会に住む大人が村の食事を取っても、多様化はできないかもしれません。『存在しない』ものは増やせないのです。
とのことです。
実験ではプレバイオティクスのみだったので腸内環境は変化しなかった!?
ただ、今回の実験では、発酵食品や腸細菌サプリといったプロバイオティクスではなく、プレバイオティクスのみだというのが気になるところです。
(この村で発酵食品が食べられているんであればはなしは別ですが、論文ではそんな記載はなかったので、おそらく食べていなかったのではないかと思います。)
プレバイオティクスとは、腸内細菌のエサのことです。
プロバイオティクスとは、腸内環境のバランスを良くする生きた微生物のことです。
少なくとも今回の実験からいえることは、腸内環境が悪い大人の腸に、いくら腸内細菌のエサ(プレバイオティクス)をぶち込んだところで、腸内環境はたいして改善しないということです。
逆にいえば、腸内環境を良くしたいなら、自分の腸にあったプロバイオティクスは必須だともいえそうです。
個人的な経験からも、普段の食事だけではまったくといっていいほど便秘が改善しなかったのに、腸内細菌を詰め込んだ「Probiotic-3」を飲み始めたところ、嘘みたいに便秘が解消しました。
個人の一体験ですが、腸内環境の改善のためにはプレバイオティクスだけでなく、プロバイオティクスも併せて摂る必要がありそうです。