血液検査項目のLDH(乳酸脱水素酵素)とは?【基準値や高値の原因】

血液検査のLDHの基準値を知りたい人「LDHの基準値を知りたい!併せて、数値が異常な時に考えられる疾患なんかについても知りたい!!」

本記事ではこの疑問に答えます。

本記事の内容

  • LDHの基準値
  • LDHとは?
  • LDHの値が異常のときに考えられる原因

医療従事者歴3年、現在も総合病院で勤務している現役の医療従事者が、血液検査項目のLDH(乳酸脱水素酵素)についてわかりやすく解説します。

LDH(乳酸脱水素酵素)の基準値

LDH(乳酸脱水素酵素)の基準値は病院によってまちまちですが、本記事では日本臨床検査標準協議会(JCCLS)が、2014年に発表した「共用基準範囲」の基準値を採用しています。

  • LDHの基準値:124~222 U/L

参考:日本臨床検査標準協議会(JCCLS)基準範囲共用化委員会

LDH(乳酸脱水素酵素)とは?

LDH(乳酸脱水素酵素)とは、細胞内でブドウ糖をエネルギーに変換するときに必要な酵素です。

LDH(乳酸脱水素酵素)の役割

具体的にいうと、LDH(乳酸脱水素酵素)の役割とは、エネルギー産生経路の一つである嫌気的解糖系の最終段階に働く酵素(ピルビン酸+NADH+H+⇔乳酸+NAD+)です。

LDH(乳酸脱水素酵素)が触媒する反応

  • ピルビン酸+NADH+H+
    ⇔ 乳酸+NAD+

乳酸は、激しい無酸素運動をおこなったときなんかに、筋肉細胞内でブドウ糖がエネルギーとして代謝される際に、最終的につくられる物質です。
一般的に、乳酸は筋肉疲労の原因物質として知られています。

この乳酸を生成するための必要な酵素がLDH(乳酸脱水素酵素)です。

体内に蓄積した乳酸は、血液を介して肝臓にまで運ばれて、LDH(乳酸脱水素酵素)により、ピルビン酸に戻されます。その後、糖新生によりブドウ糖へと再合成されて血中に放出、エネルギー源として使われます。

LDH(乳酸脱水素酵素)が多く含まれる組織

LDH(乳酸脱水素酵素)は、ほぼすべての細胞・臓器に存在する酵素ですが、とくに骨格筋、肝臓、心臓、膵臓、脾臓、赤血球、悪性腫瘍に多く含まれています。
ですので、これらの臓器の損傷で細胞・臓器が破壊されると血液中に出てきて、血液中のLDH値が上昇します。

LDH(乳酸脱水素酵素)は、細胞・臓器が破壊された場合に血液中に流出します。こういった酵素を「逸脱酵素」といいます。

しかし、ほぼすべての細胞・臓器に含まれるLDH(乳酸脱水素酵素)の増加だけでは、どの臓器の障害か判断することは難しいです。

LDH(乳酸脱水素酵素)が多く含まれる細胞・臓器

  • 骨格筋
  • 肝臓
  • 心臓
  • 膵臓
  • 脾臓
  • 赤血球
  • 悪性腫瘍

LDH(乳酸脱水素酵素)が高値のときに考えられる疾患

LDH(乳酸脱水素酵素)が高値のときは、LDH(乳酸脱水素酵素)を含む細胞・臓器が障害を受けて壊れたために、血液中にLDH(乳酸脱水素酵素)が流れてていることを意味しています。

しかし、LDH(乳酸脱水素酵素)は、ほぼすべての細胞・臓器に存在するため、臓器特異性は低いです。
つまり、いろんな疾患で上昇するため、LDH(乳酸脱水素酵素)のみの高値だけで、どの組織の障害かを特定することはできません。

このため、スクリーニング検査といって、いわゆる「ひっかけ検査」として利用されます。
まずは異常(LDH(乳酸脱水素酵素)の高値)を感知し、そのあとに他の血液検査項目や画像検査、症状などから障害部位を絞り込んでいきます。

例えば肝疾患であれば、ASTやALTも増加します。心筋や骨格筋の疾患であれば、CKやASTも増加します。

LDH(乳酸脱水素酵素)が高値のときに考えられる疾患や原因

  • 肝疾患(急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、肝臓癌など)
  • 心疾患(急性心筋梗塞、心筋炎、心不全など)
  • 腎疾患(腎不全、ネフローゼ症候群、腎癌など)
  • 血液疾患(白血病、溶血性貧血、悪性リンパ腫など)
  • 肺癌、膵癌、肺梗塞、間質性肺炎
  • 筋ジストロフィー、横紋筋融解症
  • 妊娠後期
  • 激しい運動後
  • 喫煙

LDH(乳酸脱水素酵素)の半減期はおよそ数時間~3日です。ですので細胞・臓器の破壊が少なくなればLDH(乳酸脱水素酵素)は数日以内に減少に転じます。逆に細胞・臓器の破壊が亢進している場合には上昇あるいは高値が持続することになります。

これは病態の経過を判断する場合に参考となります。

例えば心筋梗塞の場合、発症後6~10時間で上昇しはじめ、24~60時間後にピークとなったあとは減少し、6~15日で基準範囲にまで戻るとされています。

LDH(乳酸脱水素酵素)の値と疾患のおおよその目安

LDH(乳酸脱水素酵素)
U/L
判定疾患
120以下低値正常者でもみられるため、経過観察。
120~442正常
442~500軽度上昇慢性肝炎、肝硬変、腎炎、筋障害、軽い心筋梗塞など
500以上中・高度上昇心筋梗塞、溶血、悪性腫瘍、白血病、悪性貧血など

LDH(乳酸脱水素酵素)の値と疾患のおおよその目安を上の表にまとめました。

ただし、LDH(乳酸脱水素酵素)が高値だけで疾患を特定することはせず、他の血液検査項目や画像検査、症状などから総合的に判断します。

LDHアイソザイムのパターンやASTとの比(LDH/AST)により障害部位をある程度まで推定することができます。

LDHアイソザイムのパターン

LDH(乳酸脱水素酵素)には5種類のアイソザイム(LDH1~5)があります。

それぞれのアイソザイムによって多く含まれる細胞・臓器が異なります。したがって、どの病気によって上昇するアイソザイムが違います。

「LDH(乳酸脱水素酵素)」はこれらのアイソザイムの総量を測定しています。

LDHアイソザイムのパターン

LDH1とLDH2増加溶血性貧血、悪性貧血、心筋梗塞など
LDH2とLDH3が増加白血病、膠原病、肺癌、悪性リンパ腫、進行癌、膵炎、筋ジストロフィー、など
LDH4とLDH5が増加肝炎、肝癌、前立腺癌、多発性筋炎、骨格筋の損傷、うっ血性心不全など

ASTとLDHの比(LDH/AST)

LDH(乳酸脱水素酵素)が高値のとき、どの細胞・臓器の障害に由来するものかを考える際に、まず注目するのがASTです。

ASTとLDHの比(LDH/AST)をみることで、障害されている組織をある程度推測することができます。

LDH/AST疾患・病態
5以下急性肝炎、肝癌
5前後心筋梗塞
5~15慢性筋疾患
10~20前立腺癌、間質性肺炎、ウイルス感染症
15以上白血病、悪性リンパ腫、肺癌、胃癌
20~80溶血性貧血

LDH(乳酸脱水素酵素)が低値のときに考えられること

臨床的に、LDH(乳酸脱水素酵素)が低くて問題になることは稀です。

 

というわけで今回は以上です。