
本記事ではこの疑問に答えます。
- マグネシウムとは
- 体内にあるマグネシウムの量や分布に関して
- マグネシウムの働きや役割
- マグネシウムが不足してしまったら・・・
- マグネシウムの摂取量について
カルシウム、カリウム、ナトリウムに次いで、体内で4番目に多く存在するものの、その重要性は意外と軽視されています。
しかし、代謝全般にかかわったり、神経細胞の働きに必要だったり、良質な睡眠にも関わってたりと意外とその役割は大切です。
そこで今回は、「マグネシウムの概要」についてまとめました。
目次
1.マグネシウムとは

(著作権者:ワット・ロングァーティさん、ライセンス:CC by-sa 3.0 Unported、2.5 Generic、2.0 Genericおよび1.0 Generic、<wikipedia「マグネシウム」>)
マグネシウムは元素記号Mg、原子番号 12、原子量 24.305 の金属で、地球上で6番目に豊富な金属です。
元素記号 | Mg |
---|---|
原子番号 | 12 |
原子量 | 24.305 |
金属としては、実用金属のなかでもっとも軽く、強度も比較的高いという特徴があります。
ですので、今まで鉄などの重い金属が使われている部分をマグネシウム合金に変えることで、部品を薄くしたり、軽量化したりするといった目的で利用されています。
ノートパソコン(Panasonic「レッツノート」)、車のホイールやエンジンブロック、メガネ、カメラボディ、車いすなど
マグネシウムは、アルミニウム合金に添加されて使われることが多いです。
マグネシウムをメインとしたマグネシウム合金として使用する場合は、アルミニウムや亜鉛などが添加されます。
2.体内にあるマグネシウムの量や分布について

マグネシウムは、五大栄養素のうちの一つのミネラルです。
ここでは体内の量や分布についてみていきます。
五大栄養素:炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルの5つのことです。
ミネラル:地球上の元素のうち、水素、炭素、窒素、酸素の4つをのぞいたものの総称のことです。
2.1.身体の中にあるマグネシウムの分布
成人の身体には約25gのマグネシウムがあります。
このうち、半分は骨の成分として、残りは軟部組織の細胞内に存在します(1)。
そして血中にあるのはごくわずか(約0.3%)です(2)。
- 骨:50~60%
- 軟部組織:約40%
- 血清:約0.3%
さらに詳しい身体の中のマグネシウムの分布は以下のとおりです。
マグネシウム | |
骨 | 3,000(μg/g) |
---|---|
脳 | 390(μg/g) |
腎臓 | 310(μg/g) |
筋肉 | 190(μg/g) |
心臓 | 180(μg/g) |
血清 | 21(μg/ml) |
μg/gという単位は1gあたりにふくまれる物質の質量を100万分の1gの単位(μg)で表したものです。
2.2.血清中のマグネシウム濃度
血清中のマグネシウム濃度の正常値は 1.8~2.4 mg/dL です。
ただし、血清中のマグネシウム濃度は体内の総マグネシウム量を反映しているわけではありません。
つまり、血清中マグネシウム濃度が正常でも、体内のマグネシウムは不足している可能性があるということです。
3.マグネシウムの働きや役割

マグネシウムの役割は主に以下の5つです。
- 約300種の酵素反応の補酵素として
- 骨を強くする
- 神経の伝達に必要
- 血圧の調節
- 睡眠の質を改善
3.1.約300種の酵素反応の補酵素として
マグネシウムは、ATP、タンパク質や脂質の合成、遺伝子の合成など、約300種の酵素反応にかかわっています。
ですので、体内の代謝全般にかかわっており、体が正常に働くために必須のミネラルです。
まさに身体にとってオイルのようなもので、マグネシウムが不足すると身体が正常に機能しなくなってしまいます。
3.2.骨を強くする
マグネシウムは、カルシウムやリンとともに骨の成分となります。
なお、体内のマグネシウムの50~60%は骨に存在しています。
- ミネラル(カルシウム、リン、マグネシウム)
- コラーゲン
また、カルシウムの働きを助けて骨を強くするのをサポートしています。
血清中のマグネシウムが低値だと、骨粗鬆症のリスクが上がるというデータもあります(4)。
3.3.神経の伝達
マグネシウムは脳細胞内にも多く含まれていまして、神経伝達にも関係しているので、脳の正常な働きに必須です。
ですので、マグネシウムが不足してしまうと不安症や、イライラしやすかったり、神経過敏などの原因になったりします。
仕事のストレスでいつも不安感を感じている場合はマグネシウムが不足している可能性があります。
3.4.血圧
カルシウムが血管を収縮させて血圧を上げるのに対し、マグネシウムは血管を拡張させて血圧を下げる働きをしています。
この2つのミネラルのバランスにより血圧を適正な値に維持しています。
ですので、カルシウムの過剰やマグネシウムの不足は高血圧の原因に、逆にマグネシウムの過剰は低血圧の原因になります。
3.5.睡眠
英国のエジンバラ大学が『Nature』に、マグネシウムは体内時計の調整にも関わっているという研究結果を報告しています。現代人は生活リズムが乱れやすく、そのせいで体内時計が乱れ、不眠の原因となっている人が多いですのでこれは見過ごせません。
マグネシウムはこの体内時計のリズムを正すのに一役買っています。
実際、高齢者を対象にした研究で、500mgのマグネシウムを服用するグループとプラセボのグループに分けて8週間実験を行った結果、睡眠の質が改善したと報告しています(5)。
また、別の研究では低マグネシウム状態が睡眠の質を下げている可能性があると報告しています(6)。
4.血清中のマグネシウムが不足してしまったら・・・

血清中のマグネシウムが不足した場合、以下の症状が現れるので注意してください(7)。
- 神経筋症状・・・テタニー、痙攣、不随意運動
- 心血管症状・・・心電図異常(QRS開大、T波増高・消失、PR延長)、上室性・心室性不整脈
- 電解質異常の併発・・・低K血症
5.マグネシウムの摂取量について

5.1.マグネシウムの摂取量の基準【日本人の食事摂取基準(2015年版)】
日本人の食事摂取基準(2015年版)では、通常の食品からのマグネシウム摂取量については耐容上限量を設定していません。
(通常の食品からのマグネシウムの過剰摂取によって好ましくない健康影響が発生したとする報告は見当たらないため、通常の食品からの摂取量の耐容上限量は設定しなかったとのことです。)
ただし、医薬品(制酸薬、緩下薬)やサプリの場合、成人の場合350mg/日の耐容上限量が定められています(8)。
この量の根拠として、下痢が起きない程度ということだそうです。
耐容上限量とは、この値以上を超えて摂取した場合、健康被害が発生する可能性がゼロではなくなることを示す値のことです。
5.2.サプリ
マグネシウムにはいろいろ種類がありますが、吸収率の高いクエン酸マグネシウムがおすすめです。
1日あたり200~400mgを目安に飲めばいいでしょう。500mgを超えて飲むと下痢を起こすことがあるので注意してください。
日本人はマグネシウムが多い葉物野菜が足りていない人が多いので、慢性的に不足しているともいわれています。あんまり食べれてないなと思う人はサプリで補充しときましょう。

マグネシウムは、エネルギー生産と代謝、筋肉の収縮、神経興奮の伝達、骨石灰化に重要な鉱物です。これは推定で300もの酵素に必要な補因子です。これらの酵素によって呼び起こされる反応には脂肪酸合成、タンパク質合成、グルコース代謝が含まれます。マグネシウムは副甲状腺への影響やカルシウムバランスの調節にも重要です。
5.3.マグネシウム過剰摂取による副作用
マグネシウムの過剰摂取によって
- 下痢
- 高マグネシウム血症
基本的に、マグネシウムのサプリメントは副作用が少なく安全性が高いといわれています。
血清マグネシウム濃度が4.8mg/dl以上で副作用が出るといわれていますので、比較的安全域は広いといわれています(血清中のマグネシウム濃度の正常値は 1.8~2.4mg/dLです)。
仮に過剰に摂取しても、腸からの吸収が抑制され、下痢を起こして排泄されます。また、尿としても排泄されます。
ですので、マグネシウムの過剰摂取による副作用で下痢以外が起こることは稀です。
- 高マグネシウム血症の副作用(9)
血中Mg濃度 | 副作用 |
---|---|
4.9mg/dl~ | 悪心・嘔吐、徐脈、倦怠感、無気力、眠気、立ちくらみなど |
6.1~12.2mg/dl | 心電図異常(PR、QT延長など) |
9.7mg/dl~ | 房室ブロック、随意筋麻痺、腱反射喪失、低血圧など |
18.2mg/dl~ | 昏睡、心停止、呼吸筋麻痺、心停止など |
というわけで今回は以上です。
参考
「統合医療」情報発信サイト「マグネシウム Magnesium」