
本記事ではこの疑問に答えます。
こんにちは、現役医療従事者の(totthi1991)トッティです。
本記事の内容は以下のとおりです。
- トランス脂肪酸とは
- トランス脂肪酸は不飽和脂肪酸の一種です
- トランス脂肪酸が含まれている食品
トランス脂肪酸は、マーガリンや安価な植物油に含まれていて身体に悪いというのは周知の事実なんですが、別に食べたからといってすぐに不調が出るというわけでもないんですよね・・・
ただ現状、それらに代わるクリーンな食品があるわけで、あえてマーガリンとかを食べる理由はないと思います。— トッティ/医療従事者 (@totthi1991) 2018年11月25日
トランス脂肪酸が身体に悪いというのはもはや常識ですが、ではトランス脂肪酸っていったいなに?というのは意外とあいまいな人も多いのではないでしょうか?
そこで本記事では、トランス脂肪酸とはいったいどんなものか、できるだけ図を多用してわかりやすく説明しています。
目次
1.トランス脂肪酸とは

トランス形の二重結合をもっている不飽和脂肪酸のことを、まとめてトランス脂肪酸と呼んでいます。
ただ、これだけでは何のことかさっぱりわからないと思いますので、順を追って説明していきます。
1.1.トランス脂肪酸は脂肪酸の一種です

中性脂肪(≒トリグリセリド)の構造
トランス脂肪酸は脂肪酸の一種です。
※ 脂質にはいろんな種類がありますが、食べ物に含まれている脂質の大部分を占めているのは中性脂肪です。
そして、トランス脂肪酸とはある特定の構造(トランス形)をもった脂肪酸のことです。
そもそも脂肪酸ってなに?って人は下記の記事で、基本的な脂肪酸の構造を紹介していますのでどうぞ。
1.2.脂肪酸の分類

脂肪酸の分類
脂肪酸の分類法には、以下の2パターンがあります。
- パターン①:脂肪酸の中に二重結合があるかないか
→ 飽和脂肪酸 or 不飽和脂肪酸 - パターン②:炭素の鎖の長さ
→ 短鎖脂肪酸 or 中鎖脂肪酸 or 長鎖脂肪酸
そしてトランス脂肪酸とは、ある特定の構造をもった不飽和脂肪酸のことです。
1.3.飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸について

引用一部改変:筋肉大全
上の図に不飽和脂肪酸の一種であるオレイン酸の構造式を示しています。
構造式の中央辺りに、炭素の二重結合(C=C)があることがわかるかと思いますが、この炭素の二重結合の構造の有無によって「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」に分けられます。
- 炭化水素基に二重結合がなし
→ 飽和脂肪酸 - 炭化水素基に二重結合があり
→ 不飽和脂肪酸
トランス脂肪酸は、二重結合(C=C)をしてる炭素(C)と結合してる水素(H)の結合のしかたに違いがあります。
つまり、トランス脂肪酸とは、ある特定の構造をもった不飽和脂肪酸のことです。
2.トランス脂肪酸とは、ある特定の構造をもった不飽和脂肪酸のことです

それでは本記事の本題にはいります。
炭素(C)と炭素(C)の二重結合をもつ脂肪酸である不飽和脂肪酸には「トランス型」と「シス型」があります。
しかし、中には「トランス型」の構造をもつ不飽和脂肪酸もあります。
この、トランス型の構造をもつ不飽和脂肪酸のことを「トランス脂肪酸」と呼びます。
2.1.トランス型の不飽和脂肪酸のことをトランス脂肪酸といいます。

上の図は、「トランス型」と「シス型」の構造の違いを示しています。
図のように、二重結合(C=C)している炭素(C)と結合してる水素(H)の結合のしかたに違いがあることがわかると思います。
※ 不飽和脂肪酸には、炭素と炭素の間に二重結合(C=C)が必ずあります。
トランスとは、”横切って、かなたに”という意味があり、脂肪酸の場合では水素(H)が炭素(C)の二重結合を挟んでそれぞれ反対側についていることを意味しています。
シスとは、”同じ側の、こちら側に”という意味で、脂肪酸の場合では水素Hが炭素Cの二重結合を挟んで同じ側についていることを意味しています。
不飽和脂肪酸における「シス型」と「トランス型」の違いをまとめると下記のようになります。
- トランス型
→ 炭素の二重結合を挟んで、水素が互い違い - シス型
→ 炭素の二重結合を挟んで、水素の向きが同じ
※ ちなみに、自然界にある不飽和脂肪酸のほとんどは、シス型で存在しています。私たちの体内にある不飽和脂肪酸のほとんどもシス型です。
2.2.まとめ

ここまでの内容をまとめます。
- トランス脂肪酸は脂肪酸の一種です。
- 脂肪酸とは、食べ物の大部分を占める中性脂肪の構成要素です。
- 脂肪酸は、
①飽和脂肪酸②不飽和脂肪酸
に分類することができます。 - 不飽和脂肪酸のうち、トランス型の構造をもつものをトランス脂肪酸といいます。
簡単にいうと、脂肪酸のうち、不飽和脂肪酸に分類されるもので、トランス型の構造をもつもののことをトランス脂肪酸といいます。
3.トランス脂肪酸が含まれる食品を簡単に紹介します

トランス脂肪酸には、天然由来のものと人工由来のものがあります。
3.1.天然由来のトランス脂肪酸
自然にある不飽和脂肪酸は、基本的に「シス型」です。
しかし、牛や羊などの反芻動物では微生物の働きによってトランス脂肪酸がつくられます。
そのため、牛肉、羊肉、牛乳などには微量のトランス脂肪酸が含まれています。
3.2.人工由来のトランス脂肪酸
人工由来のトランス脂肪酸としては、主に2パターンあります。
- パターン①:油脂の加工・精製由来
・水素添加 → マーガリン、ショートニング、ファットスプレッド
・精製 → サラダ油、キャノーラ油など - パターン②:調理する過程で発生
・揚げ物など※
※ ただし、家庭で調理する油の加熱温度(160~180℃)ではほとんどトランス脂肪酸は生成しません。
トランス脂肪酸の代表格は「マーガリン」です。
これは、本来であれば常温で液体である植物油に、加工技術である「水素添加」というものを施すことでつくられています。
水素添加とは、不飽和脂肪酸にある炭素(C)と炭素(C)の二重結合に、水素(H)を添加することで、二重結合を炭素(C)の単結合にし、飽和脂肪酸にすることです。
これにより、液体の油脂を固体の油脂にすることができます。
この処理の過程で、不飽和脂肪酸のシス型の二重結合の一部がトランス型の二重結合になり、トランス脂肪酸がつくられます。
その他、安価なサラダ油やキャノーラ油といった植物油の精製過程でもトランス脂肪酸はつくられています。
天然由来 | 牛肉、牛乳、バターなど |
人工由来 | 水素添加 →マーガリン、ショートニング、ファットスプレッドなど →上記を材料にした、洋菓子、スナック菓子、生クリーム、コーヒーフレッシュなど |
油脂の精製過程 →サラダ油、キャノーラ油などの安価な植物油 →上記を材料にした、マヨネーズ、フライドポテト、フライドチキン、レトルト食品など | |
高温調理 →サラダ油などで高温調理した場合 →揚げ物(フライドポテト、フライドチキン)など |
食品包装に書かれている成分表示でいうと、「マーガリン」「ショートニング」「ファットスプレッド」「食用植物油」「加工油脂」と書かれていれば、トランス脂肪酸が含まれています。
そして、たいていのお菓子にはこれらの成分が含まれていまして、サクサクとした食感を出すためなんかに使われています。
世界的にはトランス脂肪酸は危険な油として認識されている
トランス脂肪酸は欧米の大半の国で「毒」として使用が厳しく規制が設けられています。
ちなみに、アメリカでは2018年6月から食品へのトランス脂肪酸の使用規制(原則禁止)がされています。
世界保健機関(WHO)は、トランス脂肪酸の摂取量を総摂取エネルギーの1%未満(ちなみに、一般的な日本人でいうと2g未満)にするようにすすめています。
にもかかわらず、日本では日本人の通常の食生活では健康による被害は少ないだろうということで、2018年6月現在、規制はありません(ただし、表示義務はあり)。理由としては、日本人は欧米人に比べて、トランス脂肪酸の摂取量が少ないから、まぁ大丈夫でしょ、ってな感じです。
しかし、トランス脂肪酸の危険性はすでに世界的にすでに認められていまして、多くの国で規制がされています。おそらく今後、日本でも危険な油として使用が制限される可能性は大いにあります。
というわけで今回は以上です。