トリプトファンというのは、必須アミノ酸の一つでして、鳥の胸肉なんかに多く含まれている成分です。
このトリプトファンのなにが素晴らしいのかといいますと、体内でセロトニンやメラトニンの原料になるんです。
下記の記事でも過去に紹介しているとおり、メラトニンは良質な睡眠のためにもっとも重要なホルモンです。
また、うつ病の原因は、神経伝達物質のセロトニンとノルアドレナリンの放出量が少な過ぎることだと一般的にいわれています(うつ病の他の原因として慢性炎症もよくいわれています)。
ですので、セロトニンやメラトニンの原料になるトリプトファンは非常に重要なわけです。
そこで今回はトリプトファンの効果やどのくらい摂取すればいいのかについてまとめてみました。
目次
1.トリプトファンってなに?

トリプトファンとは必須アミノ酸の一つです。
「必須」と名がつくように、体内で合成されないアミノ酸のため、食事からしっかりと摂る必要があります。
このトリプトファンの凄いことろはといいますと・・・
脳内の神経伝達物質である「セロトニン」と睡眠ホルモンともいわれている「メラトニン」の原料になるという、大役を担っているところです。
メラトニンに関する詳しい説明は下記の記事をごらんください。
1.1.合成経路

食事から摂取したトリプトファンが、セロトニンとメラトニンにまで合成される経路は以下のとおりです(上の図と合わせてご覧ください)。
- 血中のトリプトファンが脳内に取り込まれます。
- 脳の細胞でトリプトファンは、トリプトファンヒドロキシラーゼ(+葉酸、Fe、ナイアシン)によって、5-HTPに変換されます。
- 5-HTPは、5-HTPデカルボキシラーゼ(+ビタミンB6)によって、セロトニンに変換されます。
- セロトニンは、SAMe(+Mg)によってメラトニンに変換されます。
ですので、セロトニンやメラトニンをつくるためには、ビタミンB6、ナイアシン(ビタミンB3)、マグネシウムといった栄養成分も一緒に摂取したほうがより効果的だといわれています。
ようは、栄養バランスは大事だよねという、いつものパターンなわけです。
SAMeとは、体内にもともとある物質です。
食べ物に含まれるアミノ酸の一種であるメチオニンからSAMeは合成されます。
2.トリプトファンによる二大効果

トリプトファンは、セロトニンとメラトニンの原料になる物質ですので、トリプトファンの効果は、主にこの二大ホルモンに関係したものになります。
2.1.抑うつ状態や気分改善に効果あり
トリプトファンを摂取することで、抑うつ状態や気分改善に効果があったとする実験がノースダコタ大学でおこなわれています。
この研究によると、トリプトファンを多く摂取したグループのほうが抑うつ状態が改善し、気分状態も良くなったとか(1)。
また、うつ病に対してセロトニンが有効であったとする類似の研究報告もあります(2)。
抑うつ状態とはうつ病のいくつかの症状(下記の「うつ病の診断基準」を参照)が持続している状態です。日常的にはうつ状態といわれることもあります。
抑うつ状態がある程度以上重症のとき、うつ病と呼びます。
一般的には、うつ病よりも軽い状態を抑うつ状態と呼びます。
米国精神医学会のうつ病の診断基準は下記に示すとおりで、以下の基準にいくらか当てはまれば抑うつ状態ということになります。
当てはまる項目が多い人は、トリプトファン不足の可能性があります。

引用:日本医師会-日医ニュース-うつ病・抑うつ状態と、うつ病の違いってなぁに?
2.2.うつ病はセロトニン不足が原因!?

抗うつ薬の種類
うつ病のはっきりとした原因はまだわかっていませんが、脳内の神経伝達物質のトラブルが原因じゃないの?という考えが現在の主流です。
ただ、ここ十数年の間で、セロトニンなどの神経伝達物質ではなく、脳の炎症がうつ症状の原因では?ともいわれてたりします(1)。
ですので、セロトニンの原料であるトリプトファンを多く摂取すれば、メンタル状態が必ずしも改善するという保証はありません。
ただ、抗うつ薬には副作用もあるので、抗うつ薬を試すよりも先に、普通に肉や魚に含まれているアミノ酸であるトリプトファンを摂取するほうが安全です。
2.3.睡眠の質も改善

トリプトファンの不足によってメラトニンが十分に合成されず、睡眠の質が低下します。
軽度の不眠症を対象にした実験で、1日1gのトリプトファンを摂取することで眠りに入る時間が減少したとのことです(1)。
実際、メラトニンサプリを飲み始めてから入眠するまでの時間がかなり短くなりました。
3.サプリでのトリプトファンの摂取量

WHOの必須アミノ酸推奨摂取量によると、成人が1日で摂取すべきトリプトファンの量は体重1kg当たり4mg。つまり、体重が50kgの人であれば毎日200mg程度のトリプトファンを摂取することが推奨されています。
しかし、多くのトリプトファンに関連する実験では500mg~2,000mg/日程度のトリプトファンを摂取しておこなっている場合が多いので、1日に200mgというのはやや心もとない印象があります。
加えて、トリプトファンはいろんな食品に含まれてますので、過度に偏食をせずにバランスの良い食事を心がけていれば、1日に200mgというのは余裕でクリアできるかと思います。
にもかかわらず、抑うつ状態や不眠で悩んでいるのであれば、トリプトファンの摂取量が足りていない可能性があります。
こういった人で、セロトニンやメラトニンをガンガン増やして、抑うつ状態や睡眠の質を改善したい!って人は、やはり1日当たり、1,000~2,000mgのトリプトファンが欲しいところ・・・
さすがにこれだけの量になってくると食事だけで賄うのは難しいので、サプリで補充する必要があります。
ちなみに、トリプトファンが多い食品は下記のとおりです。
魚、肉(牛、豚、鶏)、卵、大豆やナッツ類、納豆
といった感じで、トリプトファンは幅広い食品に含まれていますが、フルーツだけは少なめです。
食事から摂るトリプトファンの量が少ないなぁとか、抑うつ状態や不眠に悩んでる人はサプリで補充してください。

L-トリプトファンは健康な睡眠を促進するのに役立つ、人間栄養学における必須アミノ酸(タンパク質構成要素)です。必須アミノ酸は身体によって合成されないため、食事から得る必要があります。